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罪と罰と誓約書

 
挿絵

 パーティーがお開きとなり、陽子たちが帰ってから夫を叱った。
「嘘をつくのはやめなさい。自分がいなかった場所で、誰がどんな行動をしたかなんて、見えるわけがないでしょう? どうしてそんなに嘘ばかりつくの?」
「え~? お前、『盗み呑みと盗み食いしてつまみ出された』って言ってなかったけ?」
 夫は自分の罪を認めず、こうやって全部私のせいにする。
「そんな事やってないし言ってない」と真実を答えても、「え~、そうだったっけ?」ととぼける。
「嘘をつくのは悪い事だからやめなさい。嘘をつくと信用を失うのよ?」
「うん」
「学クンはどんなに叱っても反省が長続きしないから、『ごめんなさい、もうしません』とどんなに謝って約束しても、何度でも同じ過ちをくり返すのよね。罰を与えて痛い目に遭わないとわからないようだから、今後は『ごめんなさい、もうしません』だけでは許しません。今後は嘘をついたら罰としてスキーは一生禁止、約束を破った場合も罰としてスキーは一生禁止。スキー道具一式は処分する事」
「えー!」
「罰を受けたくないなら、嘘をつかずに約束を守れば良いだけの事でしょ」
 私は夫に誓約書を書かせた。誓約書を書かせて証拠を残さなければ、夫の嘘や約束不履行に対してスキー道具の処分を要求しても、夫が「そんな約束なんかしていない!」といつものように約束した事実のほうを否定するのは、火を見るよりも明らかだからだ。

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