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妻に恥かかせてやろうと 失敗談捏造するも大失敗

 
挿絵

 高校時代の友人陽子が結婚した。当日、私たち陽子の仲間は総合結婚式場のロビーのモニターで陽子の神前式を見守り、その後披露宴に出席した。ちなみに夫は招待されなかったので、陽子の結婚式にも披露宴にも()()()()()()()

 ところが夫はまたもやらかしてくれたのだ。先日結婚式を挙げたばかりの陽子と仲間たちを招いてのホームパーティーでの事だった。
 夫がくり広げた話によると、私は陽子の結婚式で三三九度のお酒を盗み呑みして式場からつまみ出され、披露宴ではウェディングケーキを盗み食いして宴会場からもつまみ出されたそうだ。
 陽子は神前式だったのだから、親族ではない私は結婚式には列席していない。式には列席してない私が、どうやって式場にある三三九度のお酒を呑めると言うのか? それに私がケーキを盗み食いなどしていない事は、メンバー全員が知っている。にもかかわらず夫は、私の失敗談を捏造して披露してしまうのだ。
「そんな事してないから」とやんわり言っても、夫は私の顔を指差し、「やったくせに! やったくせに! ()()()()()ぞ!」と真っ赤な嘘に真っ赤な嘘を上塗りし、真っ赤な顔で騒ぎ立て、狂ったようにあざ笑う。
 ちなみに真っ赤な顔をしているのは興奮状態だからであり、アルコールは一滴も呑んでいないのだ。酔っ払ってうっかりやらかしてしまったという「過失による罪」ではない。夫はまったくの素面でこんな仕打ちが平気でできてしまう人でなしなのだ。「恥をかかせてやろう」という明確な意志を持って故意にしているのである。
 夫はどんな大嘘をついてでも、どんな恥知らずな真似をしてでも、どんな汚い手を使ってでも、どうしてもどうしても狂おしいまでにどうしても、人前で私に大恥をかかせたい。
 これは私を笑い者にしてやろう、私の評判を落としてやろう、といつも悪だくみをしていた私の姉や小学校時代のクラスメイト(いわ)(くろ)()()や中学・高校時代の同級生(かわ)(もと)巻子と同じだ。
 当然陽子たちは戸惑い、あきれた私が夫を無視し、誰も笑わず場がシラケると、焦った夫はますます騒ぎ立てる。
「こないだもコイツ、こんな事やらかしちゃってさ~」とさらにありもしない私の失敗談をくり広げるのだ。水を打ったような静けさの中で。
「もういい加減にして」とたしなめてもまったく効果なしで、次から次へとありもしない私の失敗談をくり広げる。
 死ぬほどつまらないホラ話で場を氷点下までシラケさせて、陽子のためのせっかくのパーティーをぶち壊しにして。なのに本人だけは『俺はユーモアのセンスがあってみんなを笑わせる事が得意なオモシロ人間! だからいつでも人気者〜ッ!』と真実とは真逆な事を信じ込んでいるのだ。どこに出しても恥ずかしい夫である。

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