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夫の正体

 だがこんな誓約書など、なんの役にも立たなかった。夫はまたもやらかしてくれたのだから……。だから約束通り、罰としてスキーは一生禁止となった。
 なのに「一生スキーには行きません」という誓約などいとも簡単に破り、「田舎に農作業を手伝いに行く」と嘘をついて私を騙し、一生行かないはずのスキーに行ったのだ。そしてそれが私にばれると、謝罪もせずに逆切れした。そのうえ、よりにもよって私を嘘つき呼ばわりしたのである。夫に対し一度も嘘をついた事のない、誠実で正直者の私を。
 自分こそが稀代の大嘘つきのくせに。大嘘つきが正直者を嘘つき呼ばわりである。これがどれほどの屈辱か。何もかも全部筋違いで間違いだらけだ。
 夫は私が舅に文句を言ったと思い込んでいるのだが、私は舅に対し一言も文句など言ってない。私はお礼を言っただけだ。「学さんをスキー旅行に連れて行ってくださったそうで、ありがとうございました」と。
 だから私はその事実をありのままに説明しているのに、夫は私の言葉を信じようともせず、「嘘だ!」と暴言を吐いて私を執拗に疑い続けた。
 離婚後にわかったのだが、夫のやらかしの数々は精神的いやがらせ(モラルハラスメント)、略してモラハラだったのだ。

 結婚するまでは、夫はとても優しかったのに。こんなに優しい人は、私のそれまでの人生に一人もいなかった。それで私は『彼は心から私を愛してくれている』と思って結婚した。だがそれは彼の偽りの姿だったのである。
 本当は、夫は一生モラハラをして自分が愉しむために、私を獲物(ターゲット)として選び、偽りの愛の言葉と大嘘で私を騙して結婚したのだ。
 そして私というモラハラターゲットを手に入れると、夫は際限のないモラハラで私を苦しめ始めた。それが彼の最高の娯楽であり、生きがいだからである。

 
挿絵


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