第7話(2)形勢逆転?
「ちぃっ!」
「外した⁉」
「いや、躱された……なんという反射神経……」
閃が苦々し気に呟いた、電光石火の放ったビームは強烈だったが、インフィニ2号機の右肩を僅かに損傷させるにとどまった。とはいえ2号機は体勢を崩した為、水狩田は機体を電光石火から離し、距離を取った。
「大丈夫⁉……ではなさそうだね」
「右肩部を半分持っていかれたが……戦闘継続には問題ない。だが」
水狩田が海江田に提案する。
「こちらも奥の手を使うのはどうか?」
「残念だが、却下だね」
「何故?」
「奥の手使用は全国大会から、というのがスポンサーの意向だ。それには従わないと」
「しかし、口惜しいが向こうの合体により明確な性能差が生じたことを確認した。その差を埋めるには……」
「こちらには経験があるんじゃなかった?」
「さっきはそう言ったが……状況が変わった」
水狩田は淡々と呟いた。
「意固地にならず、柔軟に対応するのは良いことだと思うけどさ……機体の数ではこちらが多くなった。打てる手はまだ他にあるはずだ、考えてみよう」
「……」
海江田の言葉に水狩田は黙った。
「あちらさん、動きを止めたで!」
「こちらの出方を伺っているといったところかな~?」
「射程外か?」
大洋の問いに閃は首を振った。
「射程内の武装もあるよ。ただ癪だけど、当方の練度の関係でね、迂闊に砲撃しても躱されてしまう可能性がある」
「では、しばらく膠着状態か……」
「そう悠長なことも言ってられんやろ! この勝負、時間制限がある訳やないけど、稼働エネルギーには限りがある!」
隼子の言葉に閃は頷いた。
「珍しくジュンジュンの言う通りだね~。合体によってエネルギーを大分消費している。相手より先にエネルギーが尽きてしまう可能性があるね」
「珍しいは余計や!」
「誉めたつもりだったんだけど」
「どこがやねん!」
隼子と閃が言い合う横で、大洋が考え込み、やがて口を開く。
「閃……こういう手はどうだろう? 出来るか?」
「……出来なくはないね」
「ならばやってみよう!」
電光石火が肩からマシンガンを発射させる。しかし、絶妙に射程外に位置をとっていった二体のインフィニには当たらなかった。海江田が笑う。
「先に痺れを切らしてくれたか!」
「海江田、待った!」
「! 煙で視界を!」
インフィニたちの前に大きな煙が立ち込め、電光石火の姿が見えなくなる。
「小癪な真似を!」
「膝のキャノンか、口のビームが来る! 集中していれば躱せる!」
砲撃音が轟いた。海江田たちは警戒を強めるが、次の瞬間予想もしない光景が彼女たちの目に飛び込んできた。
「機体⁉」
「砲撃の反動で飛んできたのか⁉」
電光石火は反対方向に向けて口からビームを発射し、二体のインフィニとの距離をあっという間に詰めた。予想外の行動に流石の海江田たちも戸惑った。
「距離を詰めたで!」
「よし今だ! 閃!」
「了解!」
「!」
電光石火の機体が光り、銀色から金色に戻った。
「またモードチェンジ⁉」
「喰らえ!」
「! しまっ……」
再び近接戦闘モードに戻った電光石火が剣で斬りかかり、インフィニ2号機は左手の爪でその攻撃を受け止めようとしたが、受け止めきれずに爪を半分切断されてしまい、さらに体勢を崩して、前のめりに倒れ込んでしまう。
「くっ!」
「水狩田! ……!」
2号機の援護の為に鞭を振るおうとしたインフィニ1号機だったが、電光石火の返す刀によって、右手部分を半分斬り落とされて、鞭を取り落としてしまう。
「よっしゃ! もう一息や!」
「ああ!」
電光石火は両手で剣を振りかざし、目の前にうつ伏せに倒れこむインフィニ2号機に向かって、剣を勢いよく振り下ろそうとした。
「とどめだ! ⁉」
その時突如として電光石火は横から砲撃を受けた。機体をなんとか踏み止まらせた大洋は砲撃の方向を確認する。
「なんだ⁉」
「海から⁉」
「あれは……」
大洋たちが視線をやったその先には海から顔と大きなはさみを覗かせる、巨大なロブスターのようなものの姿があった。
「な、なんや! 怪獣か⁉」
「いや、違う……」
「違う⁉」
「第二波来るよ!」
ロブスターの両のはさみが開いたかと思うと、そこからビームのようなものが発射された。大洋は電光石火を操作し、何とか直撃を避けるが、再び攻撃を喰らい、倒れ込む。
「ぬおっ!」
半分パニックになりながらも隼子がモニターに映ったデータを確認する。
「該当データ無し! また新種の怪獣かいな!」
「怪獣ならここに近づくまでレーダーに何らかの反応があるはず……現在大会主催者のみならず、多くの組織・団体がこの種子島に集結している。野生の怪獣がそのレーダー網を掻い潜れるはずが無い!」
「せやったらあれはなんやねん! 勿体つけずに教えろや!」
「高度のステルス機能を備えた、古代文明人のロボット……」
「古代文明人⁉」
閃の答えに大洋は驚いた。