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ブレグランの四天王〜ラザリオ=ドルセ〜{済}

 ここは、サリスワイズ大陸の北西側にある、ブレグラン国の首都アザレア。

 一年中、温暖な気候の首都アザレアは豊富な資源に恵まれていた。

 そして、大自然を活かし街が建設されている。

 そうアザレアほどの文明を持ち合わせている国は、サリスワイズ大陸のどこを探してもないと言っても過言ではない。

 そして、アザレアの周辺およびブレグラン国内では、鉱石などあらゆる資源が日々採取されている。

 その為、砂漠化が進んでおり昔のような自然はあまり残っていない。

 この首都アザレアは、巨大な湖の真ん中に人工的な島が造られておりそこに街や城が建てられている。

 そして、街全体を石壁で囲んでいて、街への往来は湖の南側にある橋を通る以外は無理である。

 そうある意味アザレアは、自然の要塞と化しているのだ。

 この湖はレインボー湖といい、ここにしか生息しないレインボーイルカがいるためリゾート地となっている。

 その、珍しいレインボーイルカをみるため訪れる者がおおく人の往来が後を絶たない。

 その為、街の至るところに警備兵がいて厳しく監視をしている。

 街への往来が激しいだけでなく、北西部にスラム街があるため治安が良いとはいえない。

 かつて国は、このスラム街を整備しようと動いた。だがここを指揮している者が、それを阻止し今も国と対立している。

 そのスラム街を除いては、街の至るところに人々が集まり賑わっていた。

 ここは観光地という事で、レインボーイルカを象ったお菓子や造型品などのお土産物のお店がおおい。

 そして、国が軍事国家であるため武器や防具等の品数も豊富だ。

 アザレア城は、街の中心部に位置する高台にある。

 城の門には、剣が上向きに交差しペガサスが描かれたブレグラン国の旗と、虹とレインボーイルカが描かれたアザレアの旗が掲げられていた。

 城を囲んでいる石壁の四隅には、石でできた見晴らし塔がある。

 そして、いつ攻められても対処できるように、石壁の内側には武器庫が設置されている。

 城の建物の外側の庭は広く中央には大きな噴水があり、その周りを囲むように花壇が8ヶ所に分けられ設置されていた。

 城の壁は白に近い茶色の煉瓦造りで紺色の屋根だ。

 この城の北東部にある塔のような建物は、一部が極端に高く10階建である。

 城内は広く中庭に小さな噴水がある。

 そして、建物の入口の脇には、この国の王ラボンシルト=B=アザレアの剣を持った凛々しい姿の像が飾られていた。

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 ルナソルはアザレア城内の救護室にいた。

 あれからルナソルは、ルドバの街の近くの森で、ネフロスとラゴスとゴルボラと兵士たちの応急処置をした。

 その後ルナソルは、信号弾を放ち救援を呼んだあと、駆けつけた兵士たちと共にアザレア城に戻った。

 そして翌朝、ルナソルはネフロス達が眠る救護室にいた。

 ルナソルは、まだ目を覚ます気配すらないネフロスの側で心配そうにみている。

(四天王が2人もガディスにやられた。でもなぜ、あの場所にガディスがいたというの?
 それに、ルトルシニアの四天王が動いているという事は……。これは絶対、何かある!)

 ルナソルがそう自問自答していると、救護室に眼鏡をかけた男性が入ってきた。

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 この男性は、ラザリオ=ドルセといい、ブレグラン国の四天王のリーダーだ。

 眼鏡をかけていて一見、真面目そうにみえる。だが性格はかなり明るい。

 何に対しても熱くなってしまうため、度がすぎてしまうことも度々ある。

 咄嗟の判断力と行動力に優れ、どんな状況下にあってもその場その場ですぐに対処し行動に移す。

 その為、戦う相手にとっては行動が読めず最も嫌な相手となる。

 自慢のエメラルドグリーンの髪はやや癖毛で、いつも風に揺れる前髪をつねに気にしている。

 左頬に深い傷がある。だが、その理由を誰にも話そうとはしない。

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 するとルナソルは、ラザリオが中に入ってきたことに気づいた。

「あっ!ラザリオ。今、戻ったんだね」

 するとラザリオは、ルナソルの側にきて、ネフロスと隣で眠っているラゴスをみる。

「ああ。このことを聞き急ぎ馬を走らせてきた。だが、まさかネフロスとラゴスがこうもあっさりやられるとはな」

「ええ。私も未だに信じられないのよね」

「ガディスか。噂には聞いていたが、まさかこれほどの腕とはな。これは面白い!ルナソル。足取りと目的は調べがついているのか?」

 そう言うとラザリオは、真剣な面持ちになりルナソルに目線を合わせる。

「いえ。まだ調べてる途中だけど、全然わからないのよね」

「なるほどな。だが報告によると。ネフロスとラゴスは、誰かを攻撃しようとしていたんだよな?」

「ええ。ガディスを、攻撃しようとしてたのは間違いないと思う。だけど、腑に落ちない点があるのよね」

 ルナソルがそう言うと、ラザリオは不思議に思った。

「ん?腑に落ちないとはどういう事だ?」

「それは……。攻撃しようとしてガディスに凍らされた」

 ルナソルはそう言い、ネフロスとラゴスをみる。

「だけど、おかしな点があって。凍る前に、あらかじめその状態で静止させられたうえで凍らされたように見えるのよね」

「なるほどな。そうなるとあの場に他の誰かがいて、静止の魔法か時間を止める魔法を使った。だが、そんな事ができるとすれば……」

 ラザリオは、窓の外へと視線を向ける。

「まさかな。龍神バルロスがあの場にいれば別だ。だが、流石に無理だろう。いくら俺でも気づく。現れれば、あの轟音が響き渡るからな」

 ルナソルは、ネフロスをみつめながら考えていた。

「そうなのよね。だから余計、頭が混乱してるわけなのよ。それにネフロスは攻撃する時、重心を安定させる為に若干腰を落とす癖がある」

 一呼吸おくとルナソルは再び話し出した。

「それなのに、凍らされた時ネフロスの重心は低く構えていなかった。という事はネフロスは、まだ攻撃する姿勢ではなかった証拠」

 ルナソルは、思考を巡らせていた。

「ネフロスは四天王。……ましてや、相手があのガディスだとしたら。そんな隙をみせると思う?」

「確かにおかしい。そうなると、一度その場所に行く必要がある。ただそこに行っても、手がかりと足取りがつかめるとは限らんがな」

「ラザリオ。一人で行くの?」

「そのつもりだが。お前もくるのか?」

「そうね。ここでいつまでも、考えていても埒が明かないし。ネフロスの仇も取りたいしね」

 そしてルナソルとラザリオは、準備を整えると、自分の馬に乗りルドバ付近の森に向かった。

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