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 環奈の高校と珠雨の大学は途中まで方向が一緒だったので、送るような形で歩いていたが、だいぶ高校生の数が多くなってきた。ふと人混みの中に誰かを見つけ、環奈が顔を固くする。

「どうしたの?」
「う……ん、なんでもない」

 なんでもないと言うわりに、環奈の足が止まっている。そのうち男子高校生が近づいてきて、環奈の前で止まった。

「おはよう、環奈ちゃん」
「爽多くん……」

 相変わらず環奈の表情は強張っている。口を挟むべきかと思ったが、部外者である珠雨がいきなり入って行ける雰囲気でもなく、少し様子を見守ることにする。

「この前は、悪かった。俺、自分のことしか考えてなくて、まさか怖がるとか思ってなかったんだ。……怖かったんだよな?」
「少し、ね」

 環奈の声は小さい。爽多は居心地が悪そうに頭をばりばりと掻き、また謝る。

「ごめん。忘れて? あのあと俺、違う子と付き合うことにしたから、もう付きまとったりしない」
「そうなの……良かったね。誰と付き合うの?」
「別の高校なんだけど、練習試合でよくうちの学校に来てるんだ。沙也夏っていう、女子バスケやってる子で」
「――あ、そうなんだ。ふぅん。仲良くね」

 謎の沈黙があったが、環奈は笑顔を作って爽多と別れた。

「大丈夫?」
「平気だよ? ただ、女の子って、わかんないなーって思ってただけなの。沙也夏ちゃんって、多分あたしの友達。あの子もバスケやってたなあ、そう言えば。この前ヒトエで爽多くんのこと話してたの、珠雨くん聞こえた?」

「固有名詞とか忘れてたけど、そんな話、確かにあったね。……あの、ショートカットの子?」
「うん。中学から仲良くしてるんだけど、爽多くんのこと脳筋とか、あたしに合わなそうとか、しきりに断ることを勧めてきたのは、そういうことだったんだー……と思ったら、なんか興醒めしたというか。まあ、友達付き合いは、するけどね。あーやだ、ドロドロしちゃうよね! あたし女の子のこういうとこ、嫌い」
「俺も苦手」

 結構はっきりと言い切った環奈は、もう気にした様子もなかった。

「珠雨くん、またね」
「うん……また」
 手を振って別れた環奈は、なんだか清々しかった。

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