【敵と戦う】
【敵と戦う】
惑星全体を揺らすほどの振動と共に、大きな爆音が回廊に響き渡る。
レイフ達だけでなく、廊下を歩いていた者全員が足を止め、宇宙空間が見える透明な床にひれ伏すことになった。
「な、何だ···!?」
振動と爆音に驚き、口々に廊下を歩いている者は戸惑いを隠せず、叫び声をあげる者もいた。
(な、何が起こったんだ···!?)
レイフやユキ、パパゴロドンも身をかがめ、激しい振動に体勢を崩さないように努めた。激しい爆音の正体を探ろうと、3人は周囲を見渡す。3人を取り囲む周りには、異常はないようにないように思えた
『イングリッドシステムより、緊急連絡』
廊下に、朗々とした女性の声が響く。爆発音が未だに轟く中で、彼女の声ははっきりとしていた。
『アシス本部に、侵入者あり。現在アシスに常駐する軍人に、侵入者の居場所をラルに送信する。ただちに捕獲して下さい』
(えっ···)
レイフは愕然とするほかなかった。
「ば、バレてんじゃねぇか!!」
レイフは思わず声を張り上げてしまった。
(侵入者って、完璧にオレ達のことだよな?!どうして···っ!)
ユキの策で中に入れたと思っていたのに―――レイフの手を、ユキは強く握りしめた。
『繰り返します。アシス本部に、侵入者あり。現在アシスに常駐する軍人に、侵入者の居場所をラルに送信する。ただちに捕獲して下さい』
またイングリッドシステムの声が響き渡る中で、ユキに引っ張られ、レイフは走ることになった。呆気にとられるレイフとは違い、ユキとパパゴロドンの行動は速かった。
動揺を隠せない周囲と異なり、3人は廊下を駆け抜ける。
「バレちゃったなら仕方ないよね~。居場所は特定されてるんだし、走ろう~!」
「そりゃバレる感じだよなー、とっとと管理ルーム行くんだぞー」
戸惑うレイフとは違って、ユキとパパゴロドンは潔かった。
もう侵入者とバレているのなら、早く行動をしようとしている。レイフは駆けながらも、落ち着けと自分に言い聞かせる。
(このくらいで動揺してどうする。オレは、ガリーナちゃんを助けに来たんだ!)
見つかることも想定済みだ。レイフは獣耳と尻尾を逆立て、気合を入れる。
「やることは変わんねぇもんな!」
3人が回廊を駆けている最中、イングリッドシステムは同じセリフを繰り返し伝え続ける。回廊を抜けると、少し広い場所に出る。
「んっ!」
まだイングリッドシステムの管理ルームまでは距離があるが、赤い目に睨まれ、3人は足を止めた。
自然と、レイフはユキやパパゴロドンよりも前に出る。
円形の広場である。真っすぐ進めば、先ほどと同じような回廊が続くはずだ。
しかし3人の前には、赤い目をした機械人形が数十体と行き先に立ちふさがっていた。
(こいつらは、母さんが教えてくれた···)
コナツから、アシス本部の情報は教えてもらっている。彼等のような機械人形の話も、勿論聞いている。
「アシスの軍用機械人形···?」
おおよそ数は20体ほどだろう。全員が、同じ顔をしていた。
人型の機械人形だったが、つるりとした顔には鼻口などは形成されていない。何も細工をほどこされていない顔がない顔に、たった1つの赤い目だけが印象に残る。
おおよそ10体はレーザー銃が装着された両手を持ち、半分の10体には剣が握られている。武装した彼等は、駆けこんできた3人を見つめる。
不気味なほどに統制がとれた動きに、レイフはゾッとした。
「アシスの軍用機械人形と交戦開始か~。母さんが教えてくれた頃よりも強化されてそ~」
ユキは6JLを具現化させ、楽しそうに笑った。
(管理ルームに行かないと、ガリーナちゃんの居場所はわからないもんな)
レイフは少し早いと感じながらも、ラルを起動する。
手に、ゆっくりとクォデネンツを具現化させた。握りしめると、重みがずっしりと伝わってくる。
『侵入者を発見。速やかに捕獲して下さい』
レイフは覚悟を決め、クォデネンツを大きく振るいあげ、軍用機械人形の群れに先陣をきって飛び込んだ。