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16話

クッキーの背に乗り、雑草の中を進む。
最初は雑草を刈りながら進もうかと思ったが、クッキーは意に介さずに進んで行くのでそのままだ。
妖精達は自由気ままに、近くに浮いていたりココロの頭や肩に乗っていたりする。

マップの真っ白だった部分は、徐々に色づいていく。…雑草地帯しか、今の所見当たらないが。
少し進んで分かった事。視界に映る範囲は認知されたとして白から色づいていくようだ。
最初は入り口に向かって歩いていたところ、少し離れた…15mぐらいだろうか?先に入り口が見えた辺りで、マップの入り口周辺に柵(実際に柵は無い。外との境界線として表示されているだけ)が表示された。そこから向きを変え進むと、柵の表示が伸びていくので、その認識で間違いはないはずだ。
現在地付近の詳細マップなる物も見つけたが、雑草と一本道しか表示されなかった。

「あれ?何かある」

少し柵と平行に進んでいると、マップに雑草以外のものが表示された。
位置としては入り口から然程離れていない。クッキーがゆっくり歩いて5分弱ぐらいだろうか。
正方形の何かが1つ。ココロの家を少し小さくしたぐらいの広さ。
一体何があるのかと近づいてみる。けれど何も見えない。

「あれ、ここは何も無いの?」

何も無い。雑草も生えていない所。土がむき出しになっていた。
その空間に入ってみても何も起きない。マップを見てみても『?』が表示されているだけ。
明らかに人の手が加えられた四角い空間。
妖精達も知らないのか忘れてしまったのか、首をかしげている。

「何かの建物かな?家があった所みたいに、崩れちゃったとか」

そうとしか予想付かない。よくよく見てみれば端に木材のかけらのようなものが落ちているので、強ち間違いでは無さそうだ。

その場所を後にして先に進む。
再び別のものが見えてきて、そして小さな音が聞こえて来た。
サラサラと静かに流れる、少し幅のある川だ。どうやら敷地の外から通じているようだ。
流れは早くないが少し深い。無理して渡るよりは橋を探したほうが良さそうだ。今度は川辺りを進む。


「無い…」

予想は付いていたがやはりと言った所か。川は果実畑の泉に通じているのは分かったが、そこまでの道のりでも橋らしきものは見当たらなかった。
元々無かったのか、朽ちてしまったのかは分からないが、川の向こうにも敷地は続いているので、行っておきたい所だ。

「じゃあ、手は1つかな。いっぱいあるし」

橋が無いなら作っていまえば良いだけの話だ。
今日はまだ妖精達の力をあまり借りていないので、出番はまだかと輝かせている。

「クッキーが渡れる、橋をお願い出来る?」
「はーい!」
「わかったー!」

待ってましたと言わんばかりに飛び出すのはグリとディ。
その後を、他の妖精達が木材運びの手伝いに付いていく。
広さ的に2つは欲しいところだ。建ててほしい場所は今いる所と、最初に川に気がついた所辺りが良いだろうか。

待っている間に、川の此方側のマップ埋めを進めておく事にする。
結果、他は何もなかった。作った畑の約4倍の広さの雑草地があっただけだった。

「ココロー、終わったよー」
「あ、ありがとう」

マップ埋めが終わったと同時に、妖精達が呼びに来る。マップを確認すると、理想の場所に2つの橋が出来上がっていた。
探索を続けようと橋のもとへ行く。クッキーが乗ってもビクともしない丈夫な橋だ。
橋を渡り終えると、マップに変化が現れた。

「あれ?」

マップ画面の左上。方位磁石に似たマークが表示されていたのは知っていた。
八芒星?と言うのだっただろうか、四方ではなく八方まで確認できる物だ。
それは常に、右下…南東を示している。それは今も変わらない。この土地が、南の国と東の国の境にあるのだから、当然と言えば当然だ。
変化があったのはその更に上。今までは『【S】COUNTRIER』と表示されていた。それが今は【S】の部分が【E】に変わっている。
それが示す意味とは。

「もしかして川のこっち側は、東の国になるの?」

はっきりそうだと決めつけるわけにはいかないけれど。
マップの表記がそうなっているのだから、そうなのだろう。カーナビなんかも市や町、細かいところでは村までしっかり表記されている、きっとアレと同じだ。
まぁ、まさか敷地内が南と東の国を跨っていたとは思いもしなかったが。

「端はもうちょっと先っぽいね。どこまで行けるか見てこようか」

ココロの様子を気にしてか、橋を渡り終えたところで歩みを止めていたクッキーに声をかけると、ゆっくりと歩き始める。
国が変わったとは言え、同じ敷地内。景色は川の向こう側と大差ない。足元も同じく草だらけだ。
けれど少し進むと、他の妖精たちと話していたルトとレツが、ピタリとお喋りを止めてそれぞれ草に近づいていった。ルトに至っては草の中に潜っていく。

「?どうかしたの?」

再びピタリと歩みを止めるクッキー。ココロの問いかけにも反応しない2人に、クッキーから下ろしてもらい2人に近寄る。
もう一度声をかけようとすると、同時にクルリと振り返った。

「「ここ、ちがうよー」」
「え?違う?」

何が違うのか。敷地外に出た、というわけではないとは思う。念のため川沿いを柵がある方へ向かったところ、柵はまだ東側に向けて伸びているようだった。

「ここ、おやさいそだたないよ」
「ここのくさ、むこうとちがうよ」
「んー?」

野菜が育たないということは、土が農業にそぐわないということだろうか。正直、草に覆われて土の状態は見えない。まぁ、見えたところで…ではあるけれど。
そして草に関しては、同じようにしか見えない。見えないところで、形状が違うのだろうか。
ここで考えていても答えは出ないので、また機会があれば見に来ようと決め、先に進むことにした。

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