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16話

日用品のフロアは2つ。
先にたどり着いたのは調理器具や食器等の、食事に関するフロアだ。

「わー、こっちも広いね」

エントランスホールも充分広かったが、あそこは人で溢れていた。
フロアを移動してしまえば、人並みは分散されて広さも際立つ。
ハロルドが到着するのを待ってから、すぐ目の前にある店舗へ入った。

「いらっしゃいませー!」

入店に気が付いた店員の声が飛んでくる。ここは食器類を売っている店のようだ。
種類ごとに陳列されているので、端から見ていく。
食器一つ見てもたくさんある。箸やスプーン類は大きさや形状が違うものが揃えられているのはもちろん、お皿も大きいのから小さいのまで、いろんな形の物が置いてあった。

「おー、俺もここは初めて来た」
「そうなの?」
「専門家がいるから、完全ノータッチ」
「へー」

物珍しそうに店内を見ているハロルド。
ココロも、最優先で必要な物を見繕うことにした

「箸と、スプーンは小さいのと大きいのと、フォークやナイフはいっか」

時間も限られているのでさっさと決めていく。
コップやマグカップ、茶碗は目に入った物を。お皿は少し考えながら少し大きめの物と小皿を数枚。ワンプレートタイプのお皿もついでに。
あとはザッと見て回るが、今買わないと、というものは無さそうだった。

会計はセルフレジ。それはコーダイさんの店(工房?)と同じだった。
違うのは商品が手元に有るか無いか。専用の台に商品の入ったカゴ、タブレットをその隣に置けば、ディスプレイが購入画面に切り替わる。どの店の、いくらの何の商品がいつく入っているか、最後に合計金額が表示されている。
購入決定をタップすれば、カゴと一緒に台の中に入っていった。

「?」

想像していなかった現象に戸惑っていると、ディスプレイに変化が現れる。
表示された商品が1つずつ、その横に『購入完了』と表示されていく。まるでダウンロードしているかのようだ。
最後に表示された商品まで購入完了と表示されれば、自然にディスプレイがもとの画面へと戻る。

「なかなかに不思議な感覚…」

初めて体験する買い物の方法に呆然とする。が、こちらではこれが一般的なのだろう。別のレジを使ってる人がちょうど目に入ったが、その人は特に気にする様子もなく操作を終えて店を出ていった。

「まー、これは慣れだな」
「わ、ビックリした。もういいの?」

急に後ろに立っていたハロルドに驚きつつ。まぁ、慣れと言われてしまえばしょうがない。
この店での買い物も終えたので、次の店へ行くことにした。
と言っても、となりの調理器具の店に移動するだけだが。

調理器具も、種類ごとに分けられていた。
入り口近くには小物関係が置かれているので、一般的な物は端から入れていく。泡立て器にお玉、フライ返しに菜箸も。
場所を移動すればボウルやザル、まな板もいくつか置いてある。
それぞれ使い勝手が良さそうな物を選びながら進んでいくが、途中にあった包丁は一旦飛ばすことにした。パッと見ただけでは切れ味が分からない。

「おー、これは有り難い」

更に移動すれば、フライパンや鍋が並べられていた。
1つずつ選ぶこともできるが、いくつかセットになって売りだしているものがあった。
フタもや取り外しが可能な取っ手も付いている。迷う事なくそれに手を出そうとすると、横から出てきた手にヒョイっと持っていかれた

「え!?」
「カゴには入らないし、両方持ったまま歩くと危ないからね」

驚いて振り向くと、そこにはハロルドが軽々と持っていた。
箱入りで持つ所もついているので持てるだろうと踏んだのだが、ニコリと笑みを向けられれば断れない。素直に好意を受け取ることにした。

「あ、ありがとう」
「いえいえ。で、これで最後?」
「あ、ううん、あと1つ」

後回しにした包丁の元へと戻る。
切れ味を確かめる。なんてことはもちろん出来ないので、一先ずは柄が持ちやすそうな普通の包丁を選んだ。
会計を済ませて別の店へ行く。
既に大量に購入しているのに、手ぶらな状態なことに違和感を覚える。楽だからいいのだが。

途中フードコートに立ち寄り、遅めの昼食を軽く済ませつつ、その後も、色んな店を回って優先的に必要な物を購入していく。
洗剤などの消耗品、掃除用具…。
短時間でたくさん買い物するのは些か大変だが、努めていた会社のせいで判断力が高まっているので、あまり迷わずに選べるのには感謝だ。ん?なんか違う気がするけど、気にしたら終わりだ。


お陰で時間は少しある。さすがに衣類全部見るのは難しいだろうか。
そこまで考えて、とある事に気が付いた。

(服はなんとかなるけど、肌着類は先に買っときたいかも…)

衣類も正直数は少ないが、それよりも問題だった。
タブレットを確認して、店舗のある位置を確認する。
あるのは当然、婦人服関連のフロアなので、ハロルドは行きづらいのではと思っていると、

「ん?」

何かに気が付いたのか、ハロルドは自分のタブレットを取り出す。
短く操作をしたと思ったら、すぐにこちらへ向き直った。

「俺も1つ用事が出来たから、一度別行動になるけど、平気?」
「あ、うん。買い物のシステムとかようやくなれてきたから、大丈夫だと思う」

ちょうど良かった、という本音は伏せて。
待ち合わせ場所を最後の食品フロアにして、ハロルドと別れる。
そうして一人になった所で、つい先程思い至った場所へ向かった。

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