第十四話 呂布奉先、ローマを治める <序>
「可比能から旅の話を聞いたそうだな」
呂大夫は酒瓶をラクレスに差し出しながら聞いた。
「…はい」
小さな声でそう答えて呂布はラクレスを見た。
やはり自分は旅に出されるのだ。
ほとんど確信に近い予想であり、覚悟はできていたつもりであった。
だからこそ呂布は自分の中からあふれてくる寂寥感に戸惑いを隠せなかった。
「愚息がつまらないことを申しました」
杯になみなみと注がれた酒を置くとラクレスは呂大夫に向かい頭を下げた。
呂大夫は軽く笑いながらそれを制し呂布に問う。
「さて勘の良いお前のことだ、儂がお前を何処へ送りだすか見当がついておろう」
「檀石槐大人国だと愚考いたしました」
少し身を乗り出した呂大夫をまっすぐに見ながら呂布は即答した。