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第4話「ねじれたモノ⑩」

 赤く陰る夕焼けの空。
 誰そ彼時とも逢魔が時とも表現されるその時間は、影が濃くなることで、陽の加減によっては近くにいる人の顔さえも見えなくなる。
 これじゃあ、隣にいる人が魔物に代わっていても、たしかにわからないかもしれない。
 俺の気持ちを察するのかのように、どこかでカラスが不気味に鳴く。
 水天宮の境内には、サワさんが担いできたキタを囲むように、俺とスハラ、オルガとサワさん、そして、何事もなかったかのように穏やかな笑みを浮かべるミズハが揃っていた。
「ミズハ、このヒトに見覚えは?」
 階段でぶつかったのはこのヒトかもしれないと言われても、ミズハは動じることなく見覚えあるようなないような…と曖昧な返事をする。みんなに囲まれても周りを睨みつけるかのような眼をやめないキタは、ミズハを見て小さく舌打ちをしていた。
「無事だったのか、面白くねえな」
悪態をつくその言葉は、犯人の自白。
「どうしてこんなことを?」
 そんなヒトを前にしても、普段のペースを崩さないミズハに、キタは、自分の立場を理解していないのか、不遜な態度を崩さないまま、声高に演説するかのように吐き捨てる。
「人間と仲良くしてるお前たちが気に入らないんだ!“神”である俺たちが、なぜ使われなきゃならねえんだ?この街だって、俺たちが支配していいはずなんだ!」
 キタの荒れた声は、悲しい余韻を持って消えていく。前に会ったとき、キタはこんなに荒れた感じではなかった。
 キタの変わりように驚くオルガが、疑問を口にする。
「どうしてそんなことを思うの?人は、悪い人ばかりではないわ。それにあなた、人間と仲良かったじゃない」
「人間なんて、俺たちをただの道具としてしか見ていない。そいつだってそうだ。いらなくなったら俺たちを捨てるんだろう?人間なんて、みんな最後は裏切るんだ!」
 俺を睨みながら叫ぶキタは、一体何があったのかというほど、人間への不満を隠そうとしない。
「あんたがどう考えてるかはわかったよ。だけど、それはヒトを傷つけていい理由にはならないでしょ」
 スハラの言葉にキタは口を閉じるが、スハラは、そんなキタを気にせず続ける。
「公園を荒らしたり、シャッターに落書きしたのも、あんたなの?」
「…そうだよ。俺らを無視しておきながら、楽しんでる様を見るなんて面白くないだろう」
 だからやってやったんだというキタの目は、鋭く鈍い光を放つ。
 そのとき、何かの走ってくる音が近づいてきた。
「スハラ、もってきたよっ」
 現れたのは、スイとテン。テンはなんか変なにおいがするーと言いながら、鼻をひくつかせる。そしてスイは、口に咥えた何かをスハラに渡す。
 それを見た途端、キタが顔色を変えた。
「おい、まさかそれ…」

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