【父の旧友・パパゴロドン】
【父の旧友・パパゴロドン】
「レイフとユキと言ったかー?お前らの父さんから、話は聞いたことある感じだぞー。あー、大っきくなったんだなー」
黄金の半獣はのそのそとレイフとユキに近づき、おもむろにその頭をなで始めた。
ぽかんとする2人の顔を見て、彼はにんまりと笑っている。
「あ、あなたは···」
「俺か?俺は、パパゴロドンー。惑星ニューカルーの星境局員な感じだー」
「ぱ、パパゴロドン···」
レイフは彼の名前を復唱する。父から聞いたことなどない名前だ。父は傭兵などやっているせいか、特定の知り合いの話をしなかった。彼が惑星ニューカルーに来たことがあるなんて話も、聞いたことがない。
「ぱ、パパゴロドンさんは、お父さんを知ってるの〜?」
ユキも困惑気味の顔でパパゴロドンを見上げた。彼女の手には未だ銃が握られており、パパゴロドンに向けている。
「おうー。若い頃になー。今でも、たまにうちの惑星の仕事も依頼したりする感じだしなー」
「そ、そうなのか」
父の知り合いであれば、安心ができるだろう--胸をなで下ろす。
「···この機体を見たんでしょう~?私達を捕えに来たの~?」
ユキは疑心に満ちた目で、パパゴロドンから6JLを逸らさない。パパゴロドンは笑い、ほのかに手を動かした。彼の手は人の形をしておらず、ドラゴンのように鋭い爪を持っていた。
「姉の方は良い感じに用心深いんだなー、お前らは誰でも疑ってかかった方が良いんだぞー」
「え」
「全宇宙が敵になっている感じなんだからなー」
ユキの手に握られた6JLが、弾き飛ばされた。鋭い空気が、彼女の手に当たったからだ。 レイフとユキは、驚いて彼を凝視する。
「どっかーん、だ」
パパゴロドンの腕に、大きなバズーカが抱えられていた。彼のバズーカはラルによって具現化したものだろう。レイフやユキは、ただ彼に大砲の先を向けられ、たじろぐしかない。
(速かった――ユキが撃つより前に、具現化して撃ってきた)
レイフはごくりと息を呑む。
(···敵、なのか――?)
彼の間延び口調を聞き、父の知り合いと言われ、油断してしまった。
バズーカはレーザーを放つのではなく、きっと空気を発射してきたのだ。2人はパパゴロドンを警戒するように、構える。
「安心しろ―、俺はちゃんとお前等の味方な感じだー。武器を下ろせよー」
「···撃ってきた野郎が、味方?」
「お前がずっと銃向けるからだろー?」
ユキはパパゴロドンを睨み据える。彼の間延びした口調や、緩やかな笑みは変わらない。
「この機体は、アシスの連中に見つからないように俺専用のゴーモ庫に移すぞー。まさか宇宙連合も、星境局に裏切られるとは思わない感じだろー?」
「···えっ」
パパゴロドンは敵意がないことを現すように、バズーカを下に向けた。
「イリスにはちょっとばかし恩があるからなー、助けてやるんだぞー」
窓の景色を見ると、砂の景色が――静かに、移動しているように見える。