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花乙の課金アイテム

「は、はひへっ、ひあっ……ふぅ……」

「ああっ、マル君! 気を確かに!」

「ひぃ……」

「……この小動物、大丈夫なの?」

「え? ベル、そんな趣味まで……?」

「肝っ玉の小ささを揶揄しただけよ! モフモフじゃないのは要らないわ!」

「ジュリエッタ様、マル君にはこの場は刺激が強過ぎるようです」

「そう……少しずつ慣らすしかないかしら?」

「っていうか、その小動物はなんなのよ?」

「プライ商会のマルチェロ君よ」

「「「プライ商会!?」」」

 3ハモリ頂きましたー。

(ま、しょうがないわよね)
「えっとそっちの駄目な方のベル」

「駄目な方って何だ!? 家格は私の方が上な事を忘れないか!?」

「代わりに私がそのように呼べば納得するの?」

 激昂するベルミエッタにジュリエッタが割って入ると、流石に分が悪いと思ったのか……

「あいえ……つ、続けろ黒ヒロ」

「黒くないって言ってるでしょうに。私、誰一人攻略してないんだけど?」

「は? ひと握りしか成功させられてない逆ハーを達成したくせにか?」

「お前一人でも成功した時の死亡率考えたことあんのか?」

「……むしろ逝ってれば良かったのに」

「オイコラぁ!?」

(『落としてはないけど、最初から攻略済みなのは居たわよねぇ』)

(え? 何の話です乙女様?)

(『私からは言えないわぁ。いずれ本人から聞いてね』)

(えー? 気になるぅ)

 中身の過去を知る身としては、取ってつけたようなぶりっこしてるのが幻視できてキモイが、喪女さんはそのままで良いぞ。具体的には面白いから。

(……)
「うちのベルと混同しちゃうから、あんたミエね」

「変化球な名前つけんな!?」

「うちのって言うな」

 無視すんなよー。

(こいつらの相手でお腹いっぱいなのよ)
「で、ミエ。もし家格を考慮して敬って欲しいならしてあげるけど、その場合一生そのまま対応するわ。元があちらの世界出身な私達が、一生貴族然として生きていくのはきついと思うけど、良いのね?」

「ぬっ………………。はぁ、分かったよ。名前もミエで良いや。元の名前も近いから思わず拒否感が出ただけだしな」

「ま、そっちは仲良くなったらいずれ聞くわ。で、ミエは戦花繚乱どれ位やったの?」

「あー……せっかくシステム一新されたことだしってんでレアムプレイから始めたけど、レアムって脳筋が過ぎるっつーか、力こそ正義とか力こそ法だとか、果ては力こそパワーとか言うタイプの国なんだよな。だから速攻アシュカノン側に切り替えた」

「多少は触れてるのね。で、向こう側プレイしてた時もプライ商会ってあったの?」

「ああ? ……そういやあったなぁ。商会に関しては普通に国とか関係ねえんじゃねぇ?」

「と思うでしょ? 今の所分かってる範囲だと、プライ商会ってアシュカノンにしか無いのね。……だからもしかしたらだけど、私が向こうでもプライ商会が生まれるフラグを折っちゃったかもと思ってるのよねぇ」

「はぁ?」

「実は隣国にはプライ商会の倉庫があってね? 商品を留め置いたりしてたらしいの。それを、うちの家族に恨みを持つ隣国の領主の子孫? だかが国境を封鎖して行き来を制限してっていうか実質接収してたのよね。もしかしたらこちらに戻れないプライ家がレアムに流れた結果、あっちでもプライ商会が使える流れなんじゃないかなぁって思ったのだけど……」

「……お前何してんの?」

「……喧嘩を売ってきた馬鹿に言って」

 フラグアナイアレイター喪女。良い響きだな。

(ちょ、おま、何か無駄に物騒な名前つけやがって! 殲滅者ってなんだよ!?)

 フューチャーの方が良いですか?

(止めて? それもしかしなくても足癖の話ですよね!? 何時まで言われるんだか……)
「えっと、課金アイテムなんかはリアルになった花乙には無いのは当然だけど、プライ商会がどういうアイテムを扱ってるかは知っておきたいと思うのよ。……見ての通りの小心者だから別格貴族様方の集会は駄目だったっぽいけど」

「ベルミエッタ・エリエアルの両名は、フローラ・メイリアの両名と一緒にプライ商会の話を聞いてちょうだい。私達は刺激を与えないように今回はここで待ってるわ」

「「「「分かりました」」」」

 ジュリエッタの言葉に全員が頷く。執事セバスチャンが動かなくなったマル君を荼毘に付し、

(嘘言わないの。動『け』なくなった、でしょうが。荼毘にも付してないから)

 ……小さなサロンへと場所を移す。……あ、言われてないけどベルベッタもついてきてるよ。

「んでマル君、そろそろ目を覚まそうか?」

「はっ!? 皆様には格別の配慮を賜り!」

「マルくーん、もう皆さん居なくなってるからねぇー」

「はっ!? 僕はどうやってここまで……!?」

「マルくーん、多分知らないと思う新しい人達について紹介しますねぇ。こちらがベルミエッタ様、こちらがエリエアル様。家格は後で自分で調べてもらうとして、今はそういうの抜きにして話を聞きたいの。詰まりは無礼講ね」

「は、はぁ……」

「ん? あれ? 私は?」

「え? やること無いし、早々にメアラ先生に引き取られる?」

「やめて!?」

「まぁ覚える必要はないけど、ベルベッタことベルよ」

「あんたねぇ……!」

「メアラ先生」

「すみませんでした!」

「はっ!? なるほど!? 調教中なんですね!」

「してないよ!?」「されてないわ!?」

「ひぃっ!?」

 話が進まねえなぁ。

(どうしろってーのよ!)
「あー……話を戻していいかしら?」

「えっ!? ……どんな話でしたっけ?」

「紹介してから先の話をする前にこうなったのよね。進めていいかしら?」

「あっ! はい!!」

「プライ商会についてなんだけど、レアム王国に支店とかあったりする?」

「僕の知る限りではありませんねぇ……。10代前とかのご先祖様で分かれたとかそういうことでもない限りは……」

「この前、隣国でプライ商会の物資が断ち切られたじゃない? 人とかはどうだったの?」

「あ! その節は誠に……」

「それは良いから。人についてはどうだった?」

「えっと、僕の従兄弟が取り残されておりました……」

「あのまま分断されてたらレアムに流れてた可能性、あるかしら?」

「……ありますね。従兄弟は僕と違い、既に商売の一部を任されていますから」

「決まりっぽいね」

 と喪女さんが二人に振ると、やっぱりだとか予想通りか、等の反応が帰ってくる。侍女ベルに関してはどうでも良さそうだったし、そもそも喪女さんも話を振ってない。

(侍女ベルって何!? なんか名前みたいに聞こえるわ……)

「え? え?」

「んーん。こっちの話。で、マル君には商会で扱っている商品の目録や説明をお願いしたいんだけど……」

「わっ、分かりました! こ、こちらが商品目録となります!」

「んー、何々……あっ! 誘引香水メロニパフ!」

「え? まじでかっ!?」

「……あるんですねぇ」

(『メロニパフってなぁに?』)

(おや、乙女様? 脳内会話って距離関係なしだったのか)

(『うふふ。普通に壁一枚隔てた隣りにいるから、ってだけよ』)

(なぁんだ近いからってことかぁ。えっとね、意中の男性の好感度を上げるアイテムなんだけど、効果はほんのちょびっとで、1日に1度の制限があるアイテムですね。好感度を一定レベルまで、選択肢での失敗無しに無条件で上げられるアイテムだったから人気商品でしたね)

(『上限や制限付きなのね? ……意味あるの?』)

(攻略の仕方次第では、一部のキャラから不評を買うこともありますので、嫌われないために使うっていうのが一般的だったかもです。私は初期にガッツリ使いました)

(『逆ハーのためね』)

(ええそうです!)

「そ、その香水は皆様方にはお薦めしません!」

「あ? ……どういう意味だ?」

「ひぃっ!? ……確かに! 恋仲の異性へのアピールにはなりますが! 普段から使う分には良くないです! 意中の相手へのアピールが目的ですので! 特定の相手も居ないうちから使うと『誰でも良いわ!』って意味になるそうです!」

「「「 !! 」」」

「それは確かにだめですねぇ……」

「マル君とやら、よく言ってくれた。脅すような言い方をして悪かった」

「は、はしたない娘になる所でしたわ……」

 メイリアさぁん!? てか、他二人も使う気だったのか

(メイリアだって女の子よ。っていうかプレイアブルキャラクターに選ばれる程なんだから)

 でもだとすると、他の二人みたいに転生先に選ばれなかったのは何故なんだぜ?

(別格貴族の女子陣だってジュリエッタ様だけだったじゃない。逆に今回3分の2っていう高確率なのが目立つだけなのよ)

 それもそっか。

「あっ! こんなのもある! 奇跡の見効飲料:シルミル」

「マヂで?」「……あるのねぇ」「?」

(『フローラ』)

(これはですねぇ、相手の自分への好感度やら細かいステータスを『知る・見る』できるものですね)

「こ、これは少し問題がありまして!」

「今度は脅したりせん。どう問題があるんだ?」

「意中の相手と一緒に飲み合う必要があるのです! そうして初めてお互いどう思っているかが客観的に分かるようになっています!」

「 !! 」

 メイリアの食いつきが凄いけど、大丈夫か?

(大丈夫でしょ。っていうか問題がある商品どころの話じゃないな。一緒に飲み合う時点で大概な好感度が必要だわ。つまり『私の事、好きなら飲めるよね?』っていうのも同義)

 ……こうして分かっていったことは、ゲームだった頃には課金アイテムであったプライ商会の品は、何かしら使い難い制限が着いていることだけが分かっていったのだった。

(まぁ課金アイテムがどれだけ凄い性能だったとしても、リアルになった世界で何でもかんでもできるってわけにはいかないものねぇ)

 生き返らせるアイテムとか?

(乙女ゲーにそんな物はねえ。花乙なら行動力やら好感度やら、変わった所で特殊イベントのキーアイテムとか、そんな程度よ)

 でも次は戦略ゲーなんだろ?

(あ゛ーそうだったぁ……)

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