move on to the next stage
「先生会心の一枚を心霊写真にせんでくれ」
「してません。けど、なんでだろ……あたしが見誤ったのかな。本当は二人いたような気がしてならないんですよ。それに、笑ってるけどこの写真の先生、今にも泣きそうな感じがして」
「そら師走のデートスポットやからな。一人で悲しみを背負ったんや。ええか若月。夜のメリケンパークは男ひとりでも女二人でも行くとこやない。好きな人と過ごしてなんぼやで」
笑い飛ばして誤魔化そうとする俺を、教え子はにっこり笑って捕捉する。
「解明したいんです、この写真。それを解決するために、私、大学院に上がるんです」
「そんなくだらんことに人生使うな」
「できたらノーベル賞ものですよ。先生もそう思うでしょ」
「できるもんならな」
「ほらあ。あたし、歩く人工知能になります!」
「人間が人工知能になってどないすんねん。それ、ただの頭のええ人間や」
「ただじゃないですよ。私の目はすべてを見通すレンズです」
だと思うよ。その実、人間と幻が並んでいたのがわかったなら。
この子に偶然写真を撮ってもらったあの日から、六年。示し合わせたように俺の働く大学に来て、あのときからの縁が今に至ってつながっている。
好奇心と無邪気さはどういうわけか、君にそっくりだよ御幸。乗り移ってないだろうな。ここはオカルト研究室じゃないけれど、他ならぬ弟子の所業だ。本当に真相へとたどり着いたならそのときは素直に白状しよう。
俺たちのこと、見事に解明してごらん。そのときまでそっと支えてあげるから。