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ここを訪れたのはいつ以来で、何度目だろう。そんなこと覚えてもいない。
赴任先が遠方になってからはすっかり縁がなくなって、こうして二人で歩きでもしない限り、神戸ご自慢の十二月の夜景など見る気も起きなかっただろう。
隣に並ぶ彼女と手をつないで歩いている。そのつもりだった。
昔だったら週末ごとに会うことも、我慢強い彼女が寂しいを言ったときに駆けつけることもあったけど、もうそんな間柄ではなくなった。年に一度だけ許されるひとときの逢瀬のたび、俺たちはこうして一番思い出深い神戸の地に集い、一夜限りの感情を共にする。
コースは決まっている。なにをするでもなく、夕暮れの須磨海岸を歩き、国道を歩いて月が姿を見せる頃にハーバーランドの隅から隅まで歩き倒す。
ゆっくりと、ゆっくりと時間をかけてメリケンパークに足を踏み入れ、閉店前のスターバックスでコーヒーをテイクアウトして人気の少ない場所で腰を下ろす。