6th:result
思いの丈を吐き捨てた魔王の全身がどんどん薄くなって透過していく。
曲がりなりにも魔王なのにこのやられ方でお前は本当にいいのか?ちなみに数百年とか言われても俺たちは生きてないし、居座る気もないから予定では子孫もいない。
「あ、そうだ。宝玉」
起き上がった俺は魔王が首にかけているペンダントをつかんだ。
「二人ともこの世界に居候する気はないんでね。二度と会う気はないからこれだけはよこせ」
透過する最中に、魔王が首を傾《かし》げる。
「二人?……もしかして、召喚された理も知らんなんてことあらへんよな」
「知るか。さっさとよこせ」
ぽかんと魔王の頭をはたいた俺は、ペンダントごと引きちぎって宝玉を手にした。なにかを言おうとした魔王は文字通り消滅していって、途端に静寂が訪れる。
手にした橙色の宝玉をまじまじと見ると、黒いペンで文字が書いてある。持ち物に名前を書くとか魔王のくせに小学生みたいなことしやがって。興ざめだ。
「ツミタ?」
本当に勝利したのか。世界に平和が訪れたのか。いや、訪れたにしろフィニッシュがあれでは魔王もうかばれない。せめて史実は大魔法で憤死したことにしてやろう。
-ツミタの手から離れるのは久しいな。初めてお目にかかる。理に導かれし者よ。
どこからか聞こえる老人の声に、俺もルカも互いに顔を見合わせる。
「男の声真似か?」
「なんで私が言ってることになってんのよ。あんたじゃないの」
「新しい才能だな。もはや男と言っていい」
即座に発動された火炎魔法に俺の顔面は黒焦げまっしぐらだ。
「どう見ても君が握ってるそいつでしょ。でも、理ってなんのこと?」
-理は、移送の条件。別軸の者を移送するに足りる条件を指す。
「条件?」
眉をひそめるルカに宝玉は「うむ」と言葉で頷く。
-声によって人は世界を渡り、招かれる。心からの叫びと言ってもいい。その者の思いに反応した人間が空間を渡り、やってくるのだ。
「つまり、私は誰かに呼ばれた……もしかして私、モテてる?」
-呼んだ相手が異性とは限らぬ。
「ロマンのないガラクタね」
一応、送り返してもらう道具だからな。最低限の扱いはしてやれよ。
「まあいいわ。せめて願い事ぐらいはきっちり叶えなさいよ」
-無論だ。勇者よ、その者を指す人物を述べてみるがよい。たったひとつの願いごとを見事叶えてみせようぞ。
よし、と握りこぶしを作った直後に俺たちは不穏な言葉に顔を向け合った。
願いごと、ひとつだけ?