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終戦と外敵

「………………結局、四割ほどで終了ですか」
 人の楽園にて行われた大規模な戦争。仕掛けた側は統一戦争と呼んでいたが、終わってみれば大陸の四割ほどを領土にしただけで終わってしまった。一時期六割ほどまで領地にしていたが、終盤で領民の反乱と連合軍の反撃で一気に押し込まれてしまったのだった。
 その最たる原因はおそらく、元々そこそこ大きな国ぐらいでしかなかったのに、急な領土拡張で人手不足に陥ったせいだろう。
 最後に押されてしまったきっかけである領民の反乱は、占領地を満足に統治できなかったのが原因なのだから。むしろ、最盛期の三分の一程度領地を減らしただけで終わらせたことを賞賛すべきかもしれない。
 大陸全土が疲弊した戦争は、連合軍との停戦後、各国は協力し合って内政に力を注ぎ始めた。勿論、互いに隙を窺う仮初の平和だが。
 最大国家にのし上がった侵略国だが、急激な伸張により相変わらず人手不足であった。しかし、指導者である国王が優秀で、元々侵略に備えて優秀な人材を集めていたのもあり、そんな中でもなんとか回せていた。
 戦争で大陸の人口が一気に減ったので、ネメシスとエイビスはそちらに漂着者を多数案内する。減った分の補充なので、減った地域に減った数内で補充した。
 それは最大国家にとっては追い風だったようで、大陸に在る他の国の出身ではない人材というのは結構貴重であったらしい。それに、侵略した地域が多いので、その分補充された人数も多かったのもよかった。
 その辺りの指導は、ここが分水嶺とばかりに周辺が少々手薄になろうとも、国王が優秀な人材を惜しみなく派遣したおかげで大きな混乱なく行われていった。
 そうして、人の楽園を目指した大陸での最大規模の戦争は一応の終わりをみる。しかし、その燻る火が再燃する日はついぞ来なかった。なにせ、情勢がある程度落ち着いた段階で新たな脅威が現れたのだから。それも大陸の外から。それに対抗するためには、各国が手を取り合う他になかったのだから。
「………………間に合わなかった、いや意外と早かったとみるべきでしょうね」
 その流れを眺めていたれいは、誰に聞かせるでもなく、そうぽつりと呟いた。

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