分身体の個体差
漂着物を集めた一角も随分と規模が大きくなった。最初は大陸というよりはただの一区画だったというのに、大陸が一つ増え二つ増え三つ増えと徐々に規模が大きくなっていった。
最初にハードゥスをゴミ置き場にしようと先代の創造主がした時に流れ着いてきた量がまだ少なかったのだと告げるように、今では大量の漂着物がやって来る。
そのせいで、最初は区画を整理するだけでも物資不足で希望通りに埋めるのが大変だったというのに、今では漂着物を組み合わせることでポンポンと大陸を創ることだって出来てしまう。
「………………ここにも名前を付けてもいいですね。いえ、元々ここを指してハードゥスとしようとしたのでしたか」
れいは最初世界に名前を付けようとした時に、漂着物を集めた一角とペット区画を分けて考えていたのだが、最終的には面倒になって、全て纏めてハードゥスとしていた。それでも、心情的には漂着物を集めた一角こそがハードゥスではあるのだが。
まぁそんな話は今はどうでもいいとしても、随分規模を拡大させた漂着物を集めた一角を改めて確かめたれいは、ここはこことして別に名前を与えてもいいのではないかと何となく思ったのだ。いや、漂着物を集めた一角をハードゥスとして改めて分けてもいいなと思った、といった方が正確かもしれない。
ただそうなると、では世界の方の名前をどうするかを考えなくてはならない。ペット区画の名前も分けるのであれば、そちらの方も。
「………………」
それを考えると面倒だと思うので、今まで通りにハードゥスで一括りでもいいかとれいは思った。ただ、漂着物を集めた一角というのは改めた方がいい気がしたが。
「………………ハードゥスと言っても、基本的に漂着物を集めた一角の方だとはいえ、ペット区画の方の話の場合は……ペット区画と言えばいいですかね? そうですね」
結局のところ、れいが話をする相手など限られているので、それでいいような気がした。それこそペット区画の話をするのなど、余程のことが起きない限りは、ラオーネ達を除けば話相手の魔木ぐらいである。つまり管理補佐達との会話であれば、文脈と併せればハードゥスで漂着物を集めた一角の話として通じるのだ。
考えるだけ無駄だったなと思いながらも、どうでもいいことを思考することで良い息抜きにはなっただろうと思うことにする。
世界の管理というのは、大まかな作業内容だけを書き出せば、基本的には同じ作業の繰り返しであるので、ふと別のことを考えることもあるのだ。世界の変化は結構細かいので、それぐらいの余裕が必要とも言える。
今度久しぶりにハードゥスを歩き回ってみようかなとか思うも、世界を管理しているのと地上を歩き回っているのは、思考の大本は同じだが身体は別物なので、世界を管理しながらの散歩も出来る。ただ、最近は地下迷宮などの見回る部分や、ドラゴンや屍の王の漂着のように緊急の対処が必要な案件が妙に増えて、散歩するには身体が足りていなかった。
かなり規模が拡大した現在でも処理能力には大分余裕があるので、地上に出している身体を増やそうかとも検討している。
管理補佐達に任せている部分も多くあるのだが、様々な要素を試す実験要素が大きいために、やはり統一性が希薄というのは中々にやりにくい。最近は無理矢理に大枠で振り分けてはいるが、それでもまだ大変だった。
そういうわけで、れいは地上に出す肉体を増やすことにする。
まるで本体のれいみたいだと少し思わないでもないが、ハードゥスの管理者のれいに関しては、他の分身体よりも成長速度が段違いに早いので、いくら弱体化させてもらっているとはいえ、本体と似や状態になっても仕方がない。分身体に振り分けられる力は基礎の力でしかないので、そこから個々人の環境や行動によって成長速度が変わってくるものなのだから。
もっとも、それでも本体の成長速度には劣るし、仮に本体よりも成長速度が早かったとしても、本体が意図しない限りは分身体が本体を越えることはない。
それはそれとして、地上に出す肉体を二つに増やしたことで、少しは情報の取得効率が向上するだろう。
それとは別に、管理補佐達には増やしたことを伝えておかなければならないが……これに関しては、共有している知識の方に新しく情報を入れておけば問題ないだろう。新しい知識や情報は分かりやすいようになっているのだから。