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魔物の可能性

 管理者といっても万能ではない。いや、能力的には万能なのだが、全てを思い通りに出来るというわけではなかった。もしも全て思い通りに事を進めたいのであれば、その時は力技で道を造らなければならないだろう。
 もっとも、れいほど能力が高ければ、多少は未来を予測することが出来る。
 それは予知と呼べるような完璧な予測ではないが、直近であれば予測した通りになる可能性が極めて高い。だが、それはそれでつまらないので、れいはあまり未来予測はしない。
 さて、一般的な管理者は割り当てられた世界で創造し、その創造したモノを管理するのが役割だ。なので、管理者の能力は創造と管理に適した能力になっている。ただし、その管理者を創造した創造主よりは能力が戦闘に寄ってはいるので、相手が同格に近く無ければほぼ負けはしないだろう。
 それでも、少数なれどそれなりの数の管理者が、自身が創造した存在に取って代わられることがある。その場合は大半が管理者側の失敗ではあるが、中には偶然が重なって、被造物の中に突出した強さを得た存在が現れるというパターンもあった。
 そういう情報は管理者間で共有され、対策されているようだが、完全に無くなるというまでにはいかないらしい。
 ただ、そういったパターンの一部は、場所柄ハードゥスでは常に起きていた。れいをはじめとした管理側が非常に優秀なので全く問題にはなっていないが、人だけではなく、魔物や植物も随分強力な存在に成長している。
 迷宮も同様に強化されているので、ハードゥスのみで見れば実感しにくいかもしれない。人は装備と数が充実してきたので勢力を伸ばしてはいるが。
 これはもしもの話ではあるが、ハードゥスでそこそこの強さの魔物が他の世界、それもまだ若い世界に現れたらどうなるかだが、そうなると、一体でもその世界の国の一つや二つは滅びるかもしれない。そこそこの強さでそれなのだ。
 ハードゥスでは現在、一部の大陸を除き、魔物と人の勢力は拮抗している。いくら装備と数が揃っていても、やはり基本的には個の強さは魔物の方が上であるので、これはなるべくしてなっただけ。魔物は数が人よりも少ないが、しかし種類が多いので、向き不向きが激しくてあまり広域な護りには適していなかったのだろう。
 最近は一進一退の状況なので、人は無理に攻めることを止めたようであるし。これからは内側を固めることに集中していくのだろう。それこそ、れいが目指していた発展の兆しとも言える。近いうちに特殊な力を用いた分野を中心に、様々な方面で発展していくことだろう。
 魔物の方も、最近では少し動きがみられた。魔物も別に知性がないわけではない。第一に力があるだけで、考える能力はちゃんと備わっている。少なくとも、単なる動物よりは賢い。
 高位の魔物ほど知性は高いので、最近はその高位の魔物を頂点に、人のような社会を築き始めた魔物も存在していた。まだまだ課題は多いなれど、小規模な軍隊を保有している魔物も居るほど。
 そういった部分でも楽しめそうだと、れいは考えている。特に注目なのは、魔物の楽園の大陸だろうか。魔物のみの大陸なので、こちらはこちらで中々面白いことになっていた。それこそ、最近試しに設置してみた地下迷宮が魔物に攻略されたほどなのだから。
 案外、人よりも先に魔物の方が大陸間を自由に行き来できるようになるのかもしれない。

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