創造の難しさ
創造。管理者が行うそれは、想像力の及ぶ限り無限の可能性が在る。といっても、上限は存在する。どれだけ気合を入れて創造しようとも、創造主を超える存在というのは創れない。創れても同等の存在までだ。
もっとも、ここで裏技というか小技があり、それが成長という存在。もしくは強化関係でもいいのだが、とにかく、創造した後に創造した以上の力を身に着けさせるという事は可能である。
ただ気をつけなければならないのは、創造とは創造主の力を消費して創造するので、ほぼ自身と同等の存在を創造した場合、管理者は回復するまでの短い間、瀕死といってもいいぐらいに弱体化してしまう。
そして、被造物の中には創造主に反抗的な存在もたまに現れる。特に創造直後の彼我の差というのは大事な要素だ。なので、創造時に創造主に逆らわないように組み込むとか、創造後に襲われた時に対処出来る補佐を用意しておくなどが必要になってくる。
しかし、もしもの時のために補佐を用意すると言っても、自身が創造する管理補佐では、全力の創造の時は不安が残る。特に初めて全力で創造する場合は、事前に段階的に強くしていった管理補佐を用意しておかなければならないだろう。かといって、他の管理者に助力を願うのも考えものだ。創造後は弱っているので、余程信頼できる相手でなければ逆にやられてしまうこともあるのだから。
では、創造主に逆らえないように組み込むめばどうかといえば、これも一長一短がある。
当然ながら、そう組み込めば創造主には逆らわなくなるだろう。しかしそう組み込むと、そう組み込む分の容量を使用してしまうので、その分の容量を他に割り振れなくなってしまう。しかも、創造主に逆らないという情報は結構容量を使用するのだ。絶対服従までいくと、更に容量を喰う。
つまり、そんなモノを組み込むといくら全力で創造しても、結果的に微妙な性能になりかねないというわけだ。
その辺りの判断は創造する者次第ではあるが、普通は全力で創造するということはしない。
だが、無数に存在する管理者の中には、全力で創造する管理者も一定数は存在する。それで成功した者も居れば、勿論失敗した者も居る。
成功した場合はいいが、失敗した場合、その世界は管理者不在という状況になった。いや、それだけならばまだマシなのだろう。なにせ、創造した存在がそのまま世界に関わることも少なくないのだから。
力を持つが、それだけの存在。そんな者に世界の管理など出来るわけもなく、そのまま管理に失敗して世界が消滅してしまうというのは珍しくもない。
中にはその存在が世界を破壊することもあるし、管理側だけを皆殺しにするなんて事例もある。そうなれば、結局世界は崩壊するのだが。
とはいえ、ごく僅かな事例だが管理に成功するということもある。被造物が管理者を排して完全に管理者に取って代わったわけだが、その場合は元々管理が出来る管理補佐がその世界に存在していて、なおかつ新たな支配者に協力しているという場合だった。
もっとも、そんな事例は膨大な案件の中でも数えるほどしか存在しないかなり稀な事例なのだが。
さて、逆に成功した管理者の場合だが、そもそも危険を顧みずに全力で創造しようとする者は、大抵何かを抱えている場合が多い。それは大体が争いなのだが、防衛ならまだしも、侵略のための戦力として創造して、それが成功したとなると色々と問題になってくる。
全力での創造なので、簡単に言えば管理者と同等の戦力が増えるということになる。管理者が二人になるとでも言えばいいだろうか。ある時を境に管理者の基本的な能力はほぼ横並びなので、二対一だとそれだけで攻められる側は不利になってしまう。
もっとも一度成功してしまうと、その被造物を保険にして、そこから更に全力で創造して手勢を増やしていこうとするのだが。
そこまでいくと危険視されて、周辺の管理者が結託して攻めてくる場合もあるので、必ずしも優位になるとは限らない。
そういったことが、現在の管理者の世界では起きている。まぁ、れいには関係の無い話なのだが、唯一関係がありそうなのは、新たな管理者になった被造物を交流場に入れるかどうかの判断ぐらいだろうか。その辺りは交流場の管理者をしているれいに任せているが、現在は一定期間しっかりと世界を管理出来ていれば管理者と認めて入場出来るようにしているらしい。
その場合、少々異質な管理者となるが、れいとしては騒ぎさえ起こさなければ気にしなかった。もっとも、本来の管理者を倒して取って代わったような存在なだけに、その中には野心家も含まれているようで、交流場で調子に乗ったのもいたようだ。
そういった者は他の管理者の強さを察して調子に乗ったのだろう。結果として、現実を知って粛正されてしまったわけだが。