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変わらない日常と変化の兆し

「ひな、家やっと決まったって?」

その日は先にbrushupのカウンターで鷹弥を待っていた日向にカケルが言った。

「もー本当にやっと!だよ。」
と疲れたように日向が言う。

「鷹弥の仕事考えたら部屋は余分に欲しいし、何よりあのベットが入る寝室探すのが大変で…ベットは入ってもクローゼット開けられないとか扉が当たるとか。」

そう言いながらも日向は幸せそうだ。

「それにね」と真顔になって

「鷹弥のこだわりをなめてた…」
とうんざりしたように言う。

「とりあえずで探すと次がまた大変だと思って私も真剣に探し出すとなかなかだった。」

と日向は笑う。

「ひーなー!」
カウンターでカケルと話す日向にみんなが寄って来る。圭輔もそこにいた。

「今度圭輔の送別会も兼ねてBBQするからひなも来いよー」
みんなの中の一人が言うと、口々にお誘いがかかる。

圭輔と茜もまた再出発の道へと進んでいた。

「茜も来るけど、ひなも良かったら来て」

圭輔がそう言うとちょうど鷹弥が店に入ってきた。
アキや圭輔は平気だが、普段鷹弥がいる時は日向に声をかけないメンバーに少し緊張が走ってカウンターから後ずさりする。

その瞬間
鷹弥がみんなと話す中の日向を見つけて愛おしそうに笑った。

ドキッ…

男女問わずその場にいた全員が鷹弥の笑顔に息を飲んだ。

「王子が笑った…」
「ヤバっ!!笑顔やばー!」
と口々に聞こえる。

そう…最近の鷹弥は自分でも気付かないうちに日向への愛おしさが漏れるようになっていた。もちろん日向もその笑顔にやられている。

鷹弥は無表情に戻って、
「ん?どうしたの?」
と言う顔をする。

カケルが鷹弥の肩を組み首をしめる仕草で
「王子の幸せがモレてるからみんなビックリしてんだよー」
とグリグリしながらカウンターの日向の横に連れていく。

「なっ!お前、王子言うな!」
戯れるカケルに赤くなりながらも反論する鷹弥にみんな口々に

「王子が赤くなった!」
「王子がじゃれてるー!!」
と緊張が緩んで笑いに変わる。

アキが鷹弥に言う。
「今ね、ひなをBBQに誘ってたの」

それを聞いた鷹弥は
「BBQ?行っといでよ。」
とまた日向に優しい顔を向ける。

するとアキが
「なーに他人事みたいに言ってんの!王子も来るんだよ!」
と背中を叩きながら言うと鷹弥が

「は?」と驚く間もなくみんなが口々に

「おぉー!王子も参加ー!」
「こりゃ楽しくなりそーだー」
と盛り上がりながらテーブル席に戻っていった。

カウンターの日向の横で鷹弥は一人
「なんでこんなことに…?」とブツブツ言っている。
日向とアキは横で笑いが止まらない。

カケルがテーブル席でみんなと飲む圭輔を遠目に見ながら話し出す。

「圭輔がさ…逃げるような形で再出発はさせたくないって。」

日向と鷹弥はカケルの顔を見て
アキはその話を知ってたように微笑む。

「茜ちゃんはアキや…他のメンバーにも連絡とったりしてたからやっぱりあれから普通に店に来たりはできてないし気まずいままなんじゃないかな。」

「でも圭輔はここでの出来事があって前を向けたから、嫌な思いを残してココを帰ってきたくない場所にはしたくないってさ。本当時間をかけて話したんだろうな…今のあいつの行動一つ一つが茜ちゃんの為に思えるよ。」

カケルが言った言葉は日向の心も暖かくした。

「あ、でも…今回みんなの休み合わせると平日になっちゃってるんだけどひな仕事か…」
カケルが言うと
「えぇー!休もうよー」
とアキが懇願する。

brushupの店休日は月曜日
美容師やアパレル関係が多い面子はどうしても平日休みになる。

「BBQ、いつ??」日向

「再来週の月曜!」アキ

日向と鷹弥は顔を合わせた。
「その日…引越しの次の日だから有給取ってる」
タイミングに笑ってしまった。

「やったー!」とアキは喜ぶ。

「俺、仕事が…」と鷹弥が言うと
「お前はなんとでもなるでしょ」
とカケルが言う。

「昼間車出して引越し手伝ってやるから~」
とカケルが言うと
「あっ!私もー!」アキ
「お前仕事だろ?」カケル
「休む!」アキ
「コラ…」カケル

日向はあの後、カケルにキスをした事をアキからこっそり聞いていた。
でもその後も何も変わりがないと嘆いたりもうムリだと凹んだり…アキは変わらずカケルに恋をしたままだ。

カケルの気持ちはわからないが、アキの恋心が報われるといいな、と日向は思わずにはいられなかった。

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