混乱
brushup閉店後、カウンターには鷹弥と日向が残っていた。
看板を下ろして戻ってきたカケルは
「さてと…動き出したね…」
と言ってカウンターに座った。
鷹弥は黙っている。
「こんな…みんなを巻き込むなんて…」
日向は困惑している。
「女ってのは怖いねぇ…」
カケルが言うと
「同じ女でも日向はこんなことしないだろ」
と鷹弥が言う。
「…俺に怒るなよ…」
カケルは呆れたように言う。
鷹弥がイラついてるのは日向もわかっていた。それは対処法が思いつかないからだ。
「一応、今日の話圭輔にもしようとは思うけど…この件で圭輔がひなを庇うような形になったら火に油を注ぐだけだと思うしなぁ…」
カケルもどうしたものか、という感じだ。
「やっぱり私…茜さんと話した方がいいんじゃ…」日向が言う。
鷹弥がため息をつく。
「何話すの?」
「わかんないけど…!茜さんが私と話して落ち着くなら…って…」
日向は冷たい鷹弥の言い方にムキになって答えた。
「話したって落ち着くわけないだろ!余計歪んでもっと無茶苦茶な事をしだしたらどーすんだよ!」
鷹弥が少し声を荒らげて日向がビクッとする。
カケルが大きなため息をつく。
「鷹弥、お前、イラつくのはわかるけどひなにあたんな。」
「ひなも…。圭輔と話して決着が着いたのは圭輔にもひなに対する気持ちがあったからだ。茜ちゃんの場合はひなに対して敵意しかないんだ。話たってどうにもならないだろうってのは鷹弥に同感だよ。」
「結局…圭輔にしかどうにもできないんだ。でもそれには茜ちゃんが聞く耳を持ってくれないと…。今の茜ちゃんは圭輔が離れていくことが怖くて圭輔の話すら聞き入れられないんだろうな。俺らにできることなんかないよ。」
カケルは言った。
brushupの帰り道、日向と鷹弥は黙って鷹弥の部屋に戻った。
今日の無言は二人とも居心地が悪い。
「先にお風呂入るね」
日向はそう言うと浴槽にお湯をはった。
先に洗面台で化粧を落とし終えて服を脱ごうとすると鷹弥が入ってきた。
「へ?鷹弥?…何…」
と日向が言うと
鷹弥は無表情で服のまま風呂場の扉を開けてシャワーをひねって頭から浴びた。
「ちょっと!鷹弥?何やって?シャワーまだ冷たいでしょ、風邪引く…」
日向は慌ててシャワーを止めようとすると
「頭冷やしてる」
と鷹弥は言って
「ごめん、日向。…ごめん。」
と頭からシャワーを被りながら謝った。
「もう…バカ…」
日向は鷹弥に抱きついて二人で服のままびしょ濡れになる。
シャワーはやっとお湯になった。
二人は顔を見合わせて笑った。
「もうこのまま一緒に入ろっか」
鷹弥が言って二人はキスをしながら服を脱いだ。
裸で抱き合ってキスを続ける。
鷹弥が日向の身体をそっとなぞって敏感なところに触れる
「ん…っ!あ…ヤダ…」
日向が喘ぐ。
「ヤダ?風呂場って…声響いてヤラシイね」
「イジワル…」
「日向もいつもより感じてない?ほら…」
シャワーの音でさえやらしく感じてしまう。
二人は繋がったまま一緒にイッた。
浴槽で鷹弥は後ろから日向を抱きしめる。
「今日…アキちゃんに話聞いてね…もし鷹弥がいなかったらって考えたら怖くてたまらなくなった。鷹弥が行動してくれた通りになって…ホントは私、みんなに庇ってもらうようなことしてないのに…ホントは…違うのにって思うと情けなくて…」
日向が言った。
「そんなの俺だって…日向がそう思ってまた自分を責めるんじゃないかって思うと余裕がなくなって…日向にあたったりして情けない…日向はいつだって俺の余裕を無くすんだ。」
と言った。
「それに日向は何も違わない。あの時も言っただろ。日向が“みんな”との関係を守った結果だよ。」
鷹弥はそう言うとまた優しくキスをした。
「お風呂でスルのもいいね。日向の可愛い声が…」と言う鷹弥の口を
「もー!」と日向が塞いだ。
「またしような」と鷹弥。
「…外に聞こえてないよね?」
日向が言うと
「さぁ?」
鷹弥は意地悪く答えた。
茜が日向の前に現れたのはその数日後だった。