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ひとときの平穏

数日間鷹弥の家から仕事に行って鷹弥の家に帰った。

鷹弥も仕事で外に出ることはあっても日向が帰る頃には家で仕事をしたりしていた。

そのあとは日向の家で過ごしたり、お互いがお互いの家を行き来していた。

圭輔や茜の話はしなくても不安が残るままの状況を理解してる二人は一緒に入れる時間は共に過ごしていた。

何日か経って、日向はカケルから圭輔がカケルの家にいることを聞いた。
茜と話をしようと圭輔も試みたようだが、何度もあの調子ではぐらかされ家を出た。
始めは圭輔の店のスタッフの家に行くつもりだったが、事情を知ってる所の方がいいとカケルが自分の家に呼んだと聞いた。

その間、鷹弥と一緒に何度かbrushupにも行ったが圭輔には会わなかった。
みんなと茜と繋がってる以上、詮索される事を恐れて圭輔は不審がられない程度にbrushupに顔を出してると聞いて、鷹弥とカケルが示し合わせて二人が会わないようにしてくれているのかもしれない、と日向は思っていた。

日向はbrushupに行ってもみんなには挨拶する程度で、鷹弥の横で飲むことがほとんどだった。パーティでの件があるのでみんな暗黙の了解で日向と鷹弥については突っ込まなかった。

元々近寄り難い雰囲気の鷹弥には誰も声をかけることはなく、アキがたまにそっと寄ってきて日向をひやかしたりする事もごく自然な成行だった。

その後も何かある…と身構えたが2週間経っても何も起きなかった。

このまま何も起きないかも…と安心しかけた頃、日向はアキからLINEで呼び出された。

『ひなー、王子といい感じ?
最近あんまり話せてないしちょっと私も話したい事あるから会いたいなーって思ってさ。brushupで会える日ある?』

日向はアキにしてはちょっとあらたまった感じが気になって鷹弥に相談した。

「一緒に行こう。でも俺がいたら話しにくいと思うからちょっと離れて様子見てるよ」

と鷹弥は言ってくれた。

brushupに着くとすぐ
「ひなー♡」とアキが寄ってきた。
鷹弥はスっと離れてカウンターに座った。

「ちょっとあっちで…いい?」
やっぱりいつものアキとは少し違う。みんなのいるテーブルとも違う席に日向と二人で座った。

「もう、あれからひないっつも王子といるからさー!なかなか話せなくて寂しかったよ」
と話すアキはいつもの調子だ。

カケルがビールを持ってきてくれた。

アキは一口飲むと
「でさ、ひなは王子と付き合ってる、でいいんだよね?」
念を押すように聞く。

「う…うん。どうしたの?」
日向は恐る恐る聞く。

「だよねー。やっぱり違うよなー。」
やっぱりかといった感じでアキは言う。

「どういう事?」
日向が聞くとその名前が出てきた。

「あのね、ひなには気分のいい話じゃないんだけど…茜ちゃんがね…」
と名前が出たところでどこから聞いてたのか鷹弥が

「アキちゃん」
とまた突然名前を呼んで
「はぃ?」とアキの声が裏返る。

「その話俺も聞きたいなー」
と言う。

アキは「へ??」と日向の顔を見た。

しょうがないな…という顔で日向は
「アキちゃん、大丈夫。」と言うと
鷹弥が二人をカケルの前のカウンターまで連れていった。

「いらっしゃい」とカケルも笑顔で言う。

アキだけが戸惑っていた。

鷹弥とカケルには何を話しても大丈夫な事を伝えるとアキは話し出した。

「ココ最近、茜ちゃんからよく連絡来てて…その内容が…その…店長とひなが不倫してるって言うの。結婚前から付き合っててまだ続いてるって…。でもほら、王子の事あるし、それは絶対ないって私は思ったんだけどそう言っても違うの一点張りで…一時店長があからさまにひなに言い寄ってたことあるでしょ?それを勘違いしてるのかなーって思って…今までの店長の浮気癖もあるし…でもそんな事茜ちゃんに言えなくてさー」
とアキはしょんぼりした。

もし鷹弥がいなかったら…あの時連れ出してくれなかったら…そう思うと日向はゾッとした。

「あの時ひなは店長の事ちょっと困るって感じだったし、王子とちょこちょこ話してるのも私見てたし。そのあとはいっつも王子と一緒にいるからひなの事は全然疑ってなかったんだけど。」
アキの言葉に少し心が痛んだ日向だったが、鷹弥の言った通りになってて驚きながらもまた鷹弥に感謝した。

「でもその話してるの私にだけじゃなくてさ。二人が一緒にいる写真撮って来て欲しいだとかどんどん要求してくるようになって…みんなほとんど信じないから余計手当たり次第に…ちょっと怖くってね。」

鷹弥もカケルも黙って聞いている。
日向は青ざめてくる。

「店長も…なんか最近そんなの聞ける感じじゃなくて。なんかあるのかなーとは思うけど」

日向が言葉を失っていると
「アキちゃん、話してくれてありがとう」
と鷹弥が言った。

「その話…また進展あったら教えてくれる?俺にも。」
と言って鷹弥はニコッと笑った。

「は…はぃ…♡」
アキは完全にやられてる…

(キラースマイル使ったな…)
日向は呆れ顔で鷹弥を見た。

アキは少し調子に乗って
「で…お二人はいつから?どちらからー?」
と日向と鷹弥について興味津々で質問をしだす。
鷹弥がいつもの無表情に戻ろうとするとカケルが横から
「もうそりゃ鷹弥がひなにベッタ惚れ!こっちが見てらんないくらい~」
と冷やかしに入るとアキも
「キャー♡」と嬉しそうにする。

「お前っ…」
とカケルの言葉に鷹弥が焦って赤くなるとアキはいつも無表情な鷹弥のその態度に驚いて
「ひな、良かったね♡」
とコソっと言った。

日向は心から感謝して
「うん…!」と答えた。

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