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「好きだ」

カケルと別れて鷹弥と日向は家路を歩く。

「鷹弥、コンビニ寄っていい?」
と日向が言うので二人でコンビニに寄ってから家に帰った。

部屋に入ると日向は
「あのね、ココア飲みたいんだけどお鍋借りていい?」
と言った。

「ココア?いいけどなんか意外」
と鷹弥が言う。

「鷹弥も飲む?」
と言いながらキッチンで買ってきたコンビニ袋を開ける。

「んじゃもらおうかなー」
と言いながら日向の後ろから覗き込む。

「少し甘くするけど平気?」
と言いながら日向が鍋に火をかける。

「日向って甘い物は飲まないと思ってた。コーヒーもブラックだし…」
鷹弥がそう言うと

「んー…普段は飲まないかな」
そう言って二つのマグカップにココアをいれた。

二人でソファに座ってココアを飲む。
「…甘っ!」
と鷹弥が言うと日向は
「鷹弥には甘すぎたかな?」
クスッと笑って話し出した。

「昔っから…私自分の気持ち言うのが苦手で。何かあるとだいたい悪かったところ考えて自分が悪いと思うと何も言っちゃ行けない気がして…自己責任って。子供の頃友だちとケンカした時もそうで、家に帰ってただ理由も言わず泣くだけの私にお母さんがあったかいココア入れてくれたの。」

鷹弥は黙って聞いた。

「『甘い物を飲んで自分を甘やかしなさい。たまには自分に優しくしてあげないと疲れちゃうよ』って。だからたまにうんと甘いココア飲むの」

そう言って日向はニコッと笑った。

「じゃぁ…今は自分を甘やかしたい気分?」
鷹弥が聞くと

「んー…そうなんだけど…ちょっと違うかな…」

「?」鷹弥が日向の顔を覗き込む。

「いつもは自分を責めて…落ちる所まで落ちて…這い上がるためにって感じなんだけど、今日はなんて言うか…ちょっとスッキリしてお疲れ様って自分を労わる感じかな…」

そう言って日向は続ける。

「私…叶わない恋に囚われて溺れてたんだと思う。でも溺れてる事にも気付かないで藻掻くこともせずにただただ真っ暗な場所にひとりぼっちのところに堕ちていって…周りが見えなくなってた。そして今日また今度は罪悪感に溺れそうになって…でも鷹弥とカケルちゃんが真っ暗なところから引っ張り出してくれた…だから私は大丈夫だよ」

そう言う日向の顔はまた強さを纏って一層キレイだった。
鷹弥は何も言わずに日向にキスをした。

ココア味の甘いキスだった。



日向がシャワーを浴びてる間、鷹弥はぼーっと絵を見ていた。

『叶わない恋に囚われて溺れてた』
その日向の言葉がそのまま自分に当てはまった。真っ暗な場所に堕ちる…その通りだ。
鷹弥はもう何年も自分も堕ち続けていた事に気が付いた。日向と出会うまで…。

鷹弥は壁の絵を外して部屋の隅に裏向きに置いた。

日向が出てくると入れ違いに鷹弥もシャワーを浴びた。

日向は壁の絵が外されてる事にすぐ気が付いた。でも鷹弥には何も聞かなかった。
壁に付いた跡が長い間掛けられていた事を静かに物語っていた。

「日向、明日仕事だろ?朝何時に出る?」
シャワーから出た鷹弥が聞いた。

ベッドに腰掛けながら
「んー…8時過ぎで大丈夫かな。ここから近いし」
日向が答えると鷹弥も水を飲みながら横に座った。

「俺らってさ…」
鷹弥が話し出す。

「お互いの事、まだ全然知らないよな。さっき日向の話聞いてて思ったんだ。」

「俺もこんなだし…日向も聞いたりしないし。」

鷹弥がそう言うと日向は

「鷹弥とはなんか…別に話をしなくても安心するっていうか…鷹弥って何も言わなくてもわかっててくれることいっぱいあるし…」

日向が言うと
「うん。俺も日向にそう思う。」
と鷹弥が優しく笑う。

「でもさ言葉にしなきゃいけないこともあるよな…って。」

鷹弥は日向の方を向くように身体の向きを変えて座り直した。

「…もうわかってるとは思うけど…。
俺、日向が好きなんだ。」
そう言って鷹弥は日向を真っ直ぐ見た。

「好きだ。」

もう一度言った鷹弥に

「私も好き…」
日向もそう返して二人は今までで1番長いキスをした。

自然と身体はベッドに倒れた。

圭輔の跡がまだ残る日向の首筋に鷹弥は少し躊躇して
「日向…その…怖くない?」
と言った。

日向は顔を赤くして
「鷹弥に触れて欲しい…って言っても…引かない?」
と言うと一層顔を赤くした。

その顔に鷹弥はたまらず
「その顔…反則だ…」
と言ってキスをしながら優しく日向の身体に触れる。

日向の服を脱がせると下着姿の日向の綺麗な姿に残る圭輔の跡が鷹弥の余裕を一層奪う。

日向もそれに気付いて
「これ…分からなくなるくらい鷹弥の跡で消して…」と泣きそうな顔で言う。

「ただでさえ余裕ないのに…そんな顔で煽んないでよ」
そう言うと鷹弥は自分も服を脱いで
「日向…好きだ」
もう一度耳元で言いながら日向の全身にキスをした。ひとつずつ丁寧に自分の跡を残しながら…。

「日向…も…挿れていい?」
鷹弥が言うと日向はコクンと頷く。

そっと抱きしめるように鷹弥が入ってくる。

普段無口な鷹弥が安心させるように日向の名前を呼ぶ。

日向はこんなに幸せな絶頂を初めて感じた。




二人して幸せの余韻に浸っていた。

「喉…乾いちゃった…」
日向が言うと
「ん、俺も…」

そう言って鷹弥は水を取った。

布団で裸の身体を隠しながら身体を起こして水を飲む日向。隠しきれない素肌にくっきり残る“自分の跡”に鷹弥が赤面する。

「ん?なに…?」
と日向が言うと

「いや…自分でやっときながらなんなんだけど…その姿…ちょっとそそられすぎてやばい…」
鷹弥が言うと日向は自分の身体を確認する。

胸にも腰に腿…日向には見えない背中にもくっきり付いた身体中のキスマーク。

「ちょっとー!」と日向も赤面する。

「自分の余裕のなさが恥ずかしすぎる」
と言って鷹弥は
「コレ絶対他の奴に見せちゃダメだからね」
と日向に抱きつく。

「見せられるわけないよー!もー」
と言うと
「日向が言ったんじゃん」
と鷹弥がむくれる。

「変な時間に寝たから全然眠くないんだけど」
と鷹弥が言うと日向も
「私も」
と言う。
「1回じゃ満足できないんだけど」
と言いながら鷹弥が軽くキスする。
「私も…眠くなるまでくっついてたい…」
日向が言うと
「また煽る…」
と鷹弥がまた長いキスをする。

二人は自然と眠りにつくまでひたすら抱き合った。

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