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歪んだ愛

カケルからもう一人だから戻っておいで、と連絡があり日向と鷹弥はbrushupへ日向のスマホを取りに戻った。

「………で。今までの間室内型アミューズメント施設で二人とも真剣勝負に花咲かせてきた結果、その姿という事か…」

「はい…」
二人は恥ずかしそうに声を揃えた。

服は乱れ両手頭に戦利品の人形を抱える日向と鷹弥に呆れ顔のカケル。

「はぁーーー…いい大人が身体使ってやる事は他にもあるでしょうにねー」
カケルは鷹弥を見て言った。

「なっ…お前…何言っ…」
焦る鷹弥を放置してカケルは真面目な顔で

「もう終電もないし、ひなも明日休みでしょ?まだ時間いいよね?」

と言って二人を座らせた。

「まず、ひなのスマホなんだけど…」
といってカケルはポケットから取り出して日向に渡そうとしてスマホを一度上に上げる。

「ちょっと覚悟して見た方がいいかも。鷹弥も一緒にね。」

と言ってスマホの画面を上にして日向と鷹弥の間に置いた。

『着信67件』

画面の表示に二人とも青ざめた。

その瞬間着信のバイブが鳴る。

表示画面には『圭輔さん』と出た。

日向は口を覆って「嘘…っ」とこぼした。

しばらくするとバイブが止まり画面の表示は
『着信68件』になった。
「これ、全部圭輔さん…?え…なんで?」
日向は混乱してる。

鷹弥がスマホを取り電源を切った。

(圭輔が…暴走した…?)
鷹弥は日向の方を見て考えた。
日向は驚いた顔で困惑している。

(俺は1週間前にカケルと話をした内容と今日の茜と圭輔を見てたら今の状況はなんとなく推察できる。
でも日向は?日向はどこまで理解してる?
カケルもそれがわからないから俺と二人の時に見せたんだ。)

鷹弥はカケルの顔を見た。
カケルが頷く。
冷静になれということだ。
(とにかく俺は冷静にならなくちゃ)
鷹弥はもう一度カケルの顔を見て今度は鷹弥が頷いた。

「まず二人が今日出ていってからの話をするね。」カケルが切り出した。

鷹弥は自分に状況を理解させるためだと思った。

「あの後、常連客達は鷹弥と日向のカップル誕生説で大盛り上がりでさ。どっちかというと祝福モードというか、ひなは圭輔との事はひたすら隠してたし、圭輔が暴走した時も上手く対処してたからそういう意味でひなも鷹弥も二人とも確定した異性の影がなかったんだよ。その2人がくっついたってなったわけだから、とやかく言うやつはいないよね。」

(あ…これの話さっき鷹弥が言ってた話と繋がる…)日向は思った。

カケルが続ける。
「だから俺も鷹弥の行動は正解だと思ったんだ。その時はね。」

「その時…?」日向が言った。

「うん…じゃぁ、ひなは鷹弥は何からひなを守ったんだと思う?」

「カケル、それは…!」
と鷹弥が止めようとすると
「これ言わなきゃ話進まないだろ。ひなも今日少しは感じたと思うよ。」
とカケルが言って鷹弥が黙った。

(私を守った?あの空気から助け出してくれただけじゃなくて?)
少し考えて
「やっぱり…茜さんは気付いてたの?」
日向が言った。

「やっぱりひなも感じたよね。」
カケルが優しく言って続ける。
「でも正しくは今日、ひなだって確信したと俺と鷹弥は思ってる。多分…薄々は気付いてたんだろう。俺らはもし茜ちゃんにひなの存在がバレるとしたら、それは今日で、圭輔からバレる事しか考えられないと思ってた。ひなも思い当たる節はあるはずだよ。圭輔が今まで繰り返してきた浮気と、自分が本当に一緒だとは思ってないよね?」

「カケル!」
鷹弥が怒った顔でカケルを見た。
カケルがため息をつく。

「鷹弥?私大丈夫だよ。当事者なのに私がわかってないことがあるんでしょ?そんなのおかしい。ちゃんと全部知りたい。知った方がいいでしょ?カケルちゃん!そうなんだよね?」
日向は必死に二人に聞いた。

「俺が話す。」
黙っていた鷹弥が言った。

「今日日向を連れ出したのは、茜が日向を悪者にしようとしてたから。圭輔と日向になんかあったんだとみんなにわからせようとしてた。自分は浮気された可哀想な女、でも圭輔をどこまでも許す健気な女。多分茜も日向が圭輔のいつもの浮気相手とは違う事は理解してる。でもそれで何かが壊れた。日向を無理矢理今までの圭輔の浮気相手と同じという型にはめようとしたんだと俺は思った。圭輔のあの態度じゃみんなが怪しみ出すのは目に見えてた。だからあーやって日向を連れ出した。」

(そこまで考えてくれてたの…?)
日向は頭が回らない。

「俺もあの時は茜ちゃんの意図には気付いたんだけど、手段が浮かばなかったから、鷹弥が動いた時はびっくりしたよ」
カケルが言った。

「でも…その俺の行動がまた圭輔を壊したんだろ…?」
鷹弥が苦しそうに言葉にした。

「前の時もそうだ。俺がしたことで圭輔が暴走した。守ろうとしていつも日向を守れてない」

「鷹弥、違う!(違うのに)…」
日向は否定したいのに上手く言葉が出てこない。自分だけがこんなに何もわかってなかったことが情けない。

「鷹弥…それは少し違うかもしれない」
カケルが言った。

「前回は完全に鷹弥が引き金だったと思う。でも今回は多分、鷹弥だけじゃない。」
そう言ってカケルは続ける。
「二人が出ていった後、明らかに圭輔と茜ちゃんの空気が変わったんだ。…上手く言えないんだけど…明らかに違った。」

カケルが言葉を濁した。
鷹弥にはコレは日向には聞かせたくない事なんだとわかった。

「そのあと、二人はあんまり会話を交さなくなってしばらくすると茜ちゃんは変わらない感じで圭輔にはゆっくりみんなで楽しんできてと言って先に店を出た。茜ちゃんが帰ると圭輔はいつものようにみんなといたんだけど…解散して店を出てすぐ日向のスマホが鳴って。それからずっと…」

日向も鷹弥も何も話さない。

「ひな、お願いがあるんだ。」
カケルは優しくひなに言う。

「これからは、聞いた事には全部答えて欲しい。今までひなが一人で抱えてきたもの、言っちゃいけないと黙ってきた事…。正直、圭輔と茜ちゃん二人とも歪んだ部分があると思う。それがひなに向くのが鷹弥は怖いんだ。俺もね。でもひなが話してくれないとちゃんと守れないんだ。聞いた事だけでもいいから、これからはちゃんと教えてくれる?」

日向は困惑しながらも二人が真剣に心配してくれているのが痛いほどわかり黙って頷いた。

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