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なにかある…?

「…楽しかったな」
駅まで帰ってきて鷹弥が言った。

「私も。お天気で良かったね」
日向も答えた。

鷹弥「俺、昨日金払ってないしこのままbrushup行くけど日向は?」

「あ、私追いかけてきてくれたからか」と恥ずかしそうに笑って
「私今日は帰る。」と日向は言った。

鷹弥「そっか。じゃぁまた…」
日向「うん、またね!」

挨拶して歩き出そうとした日向の腕を鷹弥が掴んだ。

「ホントに大丈夫?」
一緒にいてもやっぱり圭輔の話を一度もしなかった日向に、鷹弥は離れるとなると心配になった。

日向は「心配性だなぁ」と笑って

「昨日鷹弥が上書きしてくれたでしょ」

と日向は鷹弥の耳元で言った。

鷹弥「へっ???」
(あれ?上書きって…漏れてた??
んなわけないか!)
と焦って鷹弥が真っ赤になった。

日向は笑いながら
「カケルちゃんにもすごく心配かけちゃってるから言っといて」
と言った。

「何を?」赤い顔で鷹弥が聞いた

「日向は鷹弥がいれば大丈夫って!」

と言い捨てて更にいたずらっぽく笑って日向は帰った。

さらに赤くなった鷹弥は顔を覆って
「アイツ…それを俺に言わせるのか?」
(なんてヤツだ)と思った。

brushupに着くとまだ早い時間だからか客は一人もいなかった。

「おー早いな…」と言いながら
カケルが鷹弥の顔を見て立ち止まる。
「えー…と…、それは突っ込んだらいいの?ほっといたらいいの?」
と言うと

「何が!!!」
と鷹弥はムスッと答えた。

「お前、鏡見てこいよ、顔!真っ赤だぞ」
カケルは腹を抱えて笑ってる。

「お前、うるさいよ!」
鷹弥が怒る。

「はいはーい、鷹弥ちゃんコチラへどーぞー」とカウンターの椅子を引いて
「まだヒマだからお兄さんがじっくり聞いてあげるよー」

「言うか!」
と鷹弥は言ったけど結局洗いざらい話す羽目になる。

「なるほどねー。結局ひなの家までいって一緒に寝たけど、キスのひとつもせずお手手つないで仲良くおねんねして、今日は公園デート楽しんで、挙句の果てに“上書き保存”って心の声までひなに見抜かれ、俺に“ひなは鷹弥がいれば大丈夫っ”て伝えて来いと言われた…と…」

(なーに俺は洗いざらい吐いてんだ?)
鷹弥は頭を抱えた。

「お前ね、俺が会話の少ないお前と何年友達してると思ってんの~?嘘つけないお前から洗いざらい聞き出す術なんていくらでも持ってるっつーの!」

まだカケルは爆笑しながら
「それにしても…お前、なにやってんのー!てっきり俺は鷹弥ん家連れ込んでると思ったよ。お前ん家すぐそこじゃん!あーもう!腹いてー!」

もう勝手にして…という態度で鷹弥は諦めてる。

鷹弥「そんな事できるわけないだろ!(考えたけど…)ひなに俺ん家なんて言ったらアイツはムリしてでも一人で自分家帰ったよ。」

「そうだなぁ…まぁ…でもひなのそのいい女スペックはマジでヤバいな。しかもそれ天然だろ?作り出したもんじゃないってのがすごいな。予想はしてたけどお前がこんなになるのは想像以上だな。育ちなんかねぇ…あのひながふわふわの部屋着で生脚出してんだろ…俺も惚れるわ。お前よく我慢したね。」カケルが言うと

「妄想禁止。マジでやめてくれ」と本気で鷹弥が頭を抱えた。

「まぁ…でもコレで圭輔が言ってたのも納得かな」
カケルの言葉に鷹弥は
「納得?」と返した。

「結局圭輔もひなに振り回されてたんだよ。ひなは完全無意識だと思うけど…1回圭輔が俺に言った事があるんだよ。
『俺を困らせてって言ったのにひなは絶対なんも言わない。いい女過ぎて困る』って。」

鷹弥「それって…」

「そう、完全に圭輔の方がやられてるだろ。多分ひなは圭輔の事好きになった時点でこの気持ちは絶対誰にも言わないって決めたんだろうな。そう覚悟したら絶対あの子は言わないだろ。」

鷹弥「それってアイツにも言ってないってこと?」

カケル「多分ね。俺らに対して絶対言わないのと一緒だよ。お前にも言ったことないだろ?言葉にして言うのと気持ちがモレるのとではわけがちがう。だろ?」

カケルが続ける

「でもさ男からしたら、好きってわかってるのに言われないし、我慢してるのわかってるのに責めないし…こうしていいよって上から言ってるつもりが全く反応なくて、自分からはなんっにも求めてこない…何で?ってならない?」
カケルが言うと
わかりたくもない圭輔の気持ちがわかってしまった気がして鷹弥は黙った。

「そこにお前が現れて、圭輔が壊れちゃったんだよ」
カケルは追い打ちをかけて続ける。

「まぁでも、圭輔、ひな、鷹弥この3人だけならフッたフラれただけの話なんだと思うんだけど…」

「え、だってアイツはもう結婚したんだろ?」鷹弥が焦る。

「それだよ。俺はやっぱりこの結婚おかしいと思うんだよ。いや、結婚したのを疑ってるんじゃなくて…」
カケルが言葉を選んでるのが鷹弥にはわかった。
俺にもこんなふうに言葉を選ぶ時は本気で心配してる時だ。

「圭輔、ひな、鷹弥の状況や考えてる事はだいたいわかっても、俺は茜ちゃんの事は1回ちょっとの時間会ったくらいでほとんど知らないからな…想像でしかないんだけど、圭輔があんなにわかりやすくひなにハマってるのにやっぱり茜ちゃんが気付かないなんて俺には考えられないんだよ。…ここへ来て突然の結婚だろ?しかも圭輔は結婚する事店のメンバーにも言ってなかったとかやっぱどう考えてもおかしいよ。もし茜ちゃんがわかってて圭輔を繋ぎ止めるために結婚したとしたら?子供の頃から一緒にいたら外堀から埋めるのなんか簡単だろ?」

鷹弥は黙って聞いた。カケルの話は全て納得できて青くなった。

「鷹弥…茜ちゃんは怖いよ。もしひな自身のことがバレてないとしても、多分土曜日は圭輔の“好きな人”を突き止めるために来るよ。圭輔がもし、ひなを好きなまま諦めて結婚してたとしたらそれは多分圭輔からバレる。」

鷹弥はゾッとした。

「それから…あとはひなの心配。ひなはそもそも圭輔とこうなることを望んでたわけじゃなかったんだよな、きっと。ただ好きなだけで、それを自分の中で認めてたってだけ。だから気持ちを言わない覚悟をしてたんだろうし…でもこうなって…ひなは圭輔と彼女が別れることを望んでたと思うか?」

カケルの問いに鷹弥は黙った。

「コレはひなの気持ちだからわかんないけど、望んでたならいいんだ。多分大丈夫。でももしそんな事考えてもなかったら?全ての状況がわかってしまった時ひなは罪悪感に耐えられるか…それが心配。」

鷹弥が放心状態になっている。

「鷹弥、ごめん、脅してるわけじゃないんだ。俺が勝手に…このまますんなりいかないんじゃないかと心配してるだけで…」

「いや、全部納得できるよ…やっぱお前すげーわ。言ってくれてありがとう。」
「うん…前もって情報があるのとないのじゃ全然違うよ…」
呆然と言う鷹弥に
「鷹弥?大丈夫か?」とカケルは心配になった。

少し沈黙して
「俺、もしアイツが結婚したのに日向のとこ来たら絶対許さない。日向もそれは絶対望んでないと思うから。茜って子の事は俺もよくわかんないけど、日向が傷つかないように見張る。もし傷ついても俺がそばにいる。」

カケルはほっとした顔で
「それ聞いて安心したよ。お前完全に人間になったな。笑
で、ひなは土曜来るんだろ?」

「…」鷹弥

「お前も苦労するねーハハッ…
でもやっぱりひなの言う通り“鷹弥がいれば大丈夫”だな。」
というと鷹弥は
「俺にはお前がついてるからな」
とニヤっと笑った。

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