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接近?!

圭輔と二人で話をした数日後、次に会った時にはいつものチャラけた圭輔に戻っていて日向はホッとしていた。

でもそれから何かが違うよーな…
気のせいか?

日向「カケルちゃん、今日は混んでるね」
カウンターでお酒を頼みながらカケルと話す。
カケル「給料日後だからかなぁー」
言い終わる前にまたドアが開く。

カケル「おー鷹弥!ココでいい?」
カケルはお酒を受け取るバーカウンターの1番近くの席に“鷹弥”を案内した。

鷹弥のことは日向も知っていた。
圭輔に負けず劣らずなイケメンだけど、無表情で笑ってるところをあまりみない。圭輔とは違って近寄り難いタイプ。
いつもカウンターで一人で飲んでてカケルと話しているのしか見た事がない。

お酒を待ってる日向と身体が触れるくらいの距離だったので日向はペコリと会釈をした。
…のに無視?!
その様子を見てたカケルがお酒を渡しながら
「あー…多分2人話した事ないんじゃない?鷹弥は俺の高校からの友達なんだ。
鷹弥、コッチはひな。」
と紹介してくれたからもう一度ペコッとすると鷹弥もペコッとしながらカケルを見て
「俺、お前としか話した事ないしな」
と無表情に言った。

(感じ…わるぅーー!!)
日向は思った。

カケルは困ったヤツ…って顔しながら
「あーひな、気にしないで。コイツこれが通常運転だから。人見知り激しいから知らない人とは全く会話できないの!」と鷹弥を見ながら注意するように言うと
「まぁでも…それはひなも一緒かー。似た者同士なんじゃない?」
と日向に向かって言って笑う。
(それは確かにそうかも。)
日向もカケルがいなかったら知らない人と話をしたりは絶対しない。感じ悪いと思ってしまった手前なんとなくバツが悪い顔して日向がその場を離れようとした時

「ねー。ひなってヒヨコの雛??」
と無表情の鷹弥が聞いてきた。

日向は少し驚いて、
「いや、お日様の方…ホントは日向。」
と返すと

「あーひなたぼっこの日向ね。」
と言って笑った鷹弥の顔が可愛くて日向は少しドキッとした。

「ひーなー!!」
圭輔の呼ぶ声に我に返って鷹弥の元を後にした。

「ひな、浮気してきただろー」
圭輔にお酒を渡すと同時に言われた。
日向「は??」
圭輔「さっきカウンターのヤツと話してたじゃん」
と言いながらふてくされたような態度をとる。

あの夜二人で話してから何かが違う…と日向が感じるのはコレだ。
以前より絡み方が“近い”気がする。
鷹弥と話したのは一瞬だったのによく見てるなぁ…と日向は感心する。

圭輔のチヤホヤ具合が激しくなって仲間内では日向がチヤホヤされるのがネタみたいになってる。

友達「ちょっ圭輔近いだろー!ひな♡俺の横おいで~」
とひとりが言えば
圭輔「だーめ!ひなは俺の横ー!」と肩に腕を回して圭輔が言う。
いや、だから近いって…
日向が困ってると
「ちょっとー!女子はひなだけじゃないんですけど~!コッチもチヤホヤして~」
と女子メンバーが助け舟を出してくれるも…
「だってお前ら…彼氏持ち①、彼氏持ち②、旦那持ち、スポンサー持ち…じゃねーかー」
と言われて終わる…。

そう。寂しい事に相手がいない女子は日向だけだった。
日向(はぁー…みんなすごいな。)

日向がちょっとやさぐれながら座ってると
「そういやひなの男話って聞いたことないよねー?」
と言ったのは圭輔の美容院の女性スタッフのアキだった。
「そういやない!」
みんな身を乗り出して一気に話題の中心になってしまった。
それはそうだ。みんなと仲良くなった時点で日向は圭輔に片思いなんだから…。

アキ「もしかしてじつは彼氏いるとか??」

(いやー!この話題で盛り上がるのやめて~)
日向の心の声は誰にも届かない。
と思いつつ違うことは違うとハッキリさせる性格の日向は即答で「いない!」と答えてた。
「じゃー俺いけるー?」
「いや、釣り合わんだろ。」
なんて口々にまだみんな盛り上がっている。
アキ「あ、じゃーひなのタイプは??」
アキは鋭い質問をグイグイする。
嘘がつけない性格の日向はこの話題が早く終わる事を願って…思わず口にした…

日向「浮気しない圭輔さんみたいな人!」
この言葉は全く嘘ではない。
一瞬場がシーンとなった気がしたけど…
すぐ笑いに変わった。

「そりゃひな!理想高すぎるわ!笑」
「圭輔のスペックで浮気しないなんてもうパーフェクトじゃん!」
「そりゃなかなかいねーよなぁ」
「圭輔は浮気するってのが前提で俺らのいい男ランキング最下位だからなぁ」
口々に盛り上がってる…

圭輔「おい、お前ら褒めてんのかけなしてんのか…ってほぼけなしてんじゃねーか!こら!もういーや、ダーツしに行こ~」
と男子メンバーはダーツに行った。

日向はこの会話が終わって少しホッとした。女子だけになったところでアキが言う。
「でもさ、店長の見た目と張り合える男前といえばさ…」
とカウンターの方へ目をやった。
アキ「あの無口王子くらいじゃなーい??」
無口王子?日向は誰の事かわからなかった。
アキ「いっつもカウンターで一人でさ。カケルちゃんとたまに話してる…」

あ、鷹弥の事。無口王子…
みんなそんな風に呼んでるのかー。
日向は初めて鷹弥の隠れた愛称を知った。

アキ「勇気ある女子が話しかけても一切話に乗ってこないらしいよ」

アキのその言葉を聞いてさっき少し鷹弥と会話をした事を思い出す。

(さっきはカケルちゃんがいたからな。)

さっきの鷹弥との会話はカケル以外の誰とも話をしない彼にとってかなり珍しい事だとは日向は知る由もなかった。

brushup閉店前。

カウンターには鷹弥一人。
スタッフも帰ってカケルと鷹弥二人だけだ。

カケル「鷹弥ーそろそろ閉めるぞ。」
鷹弥「んー…」
カケル「何?店閉めて飲む?家すぐそことはいえお前がこんな時間までいるの珍しいから…なんか話したい事あんの??」
鷹弥「んー…」
この男は…困ったヤツ!と思いながらカケルは黙って閉め作業をする。
「あ!そういえば…お前今日珍しく話してたな、ひなと。」
カケルが言った。
鷹弥「あー…ひなたぼっこの日向。」
カケル「お前から話しかけてんのなんかこの店で初めて見たわ。」
作業しながら話をするカケル。
あの少しの会話ですら鷹弥にとっては珍しい事だとカケルは知っていた。
鷹弥「んー…なんか気になって。」
「え?」
意外な返事にカケルは思わず作業の手を止めて鷹弥の顔を見たけど、相変わらずの無表情。
(わかんねーヤツ)
と思った。

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