09
「でも、課長と思われたくないみたいな事を前に言ってませんでしたっけ?」
「あ、あれは……お前が”課長“として意識をしてくれないから、つい口に出してしまっただけだ。忘れろ」
課長は、頬を赤くしてそっぽを向いてしまう。
あ、照れてる……可愛いかも。
意外と課長は、照れ屋さんだったりする。
それは、結婚してから分かってきた。
フフッ……とまた笑っていると
「あ、でも課長と周りに言われるのも、もう少しになりそうだけどな」と言ってきた。えっ……?
「どうして……ですか?」
皆から呼ばれなくなるってどういうことだろうか?
不思議に思いながら課長を見た。
すると課長は、クスッと笑った。
「実は、部長に就任しないかって話を頂いているんだ!」
「えぇっ……!?本当ですか?課長」
驚きのあまり課長呼びになってしまった。
課長から部長に就任。
それって普通に考えても凄い事ではないか。
「まだ正式決定じゃないから慌てるな。
今度の会議次第で決まる。
しかし、そうなると前より忙しくなるだろう。
それでも大丈夫か……?」
私を見ながら心配そうに言ってくる。
あぁ、そうか。もし決まり忙しくなると私が気がかりになるのか。
臨月が近い上に産まれたら、1人で子育てする事になるかもしれないから。
「大丈夫ですよ。いざとなったら母に来てもらいますし。
せっかくの話を無駄にしたらダメですよ!」
私は、笑顔で大丈夫だと伝える。
課長は、相変わらず心配性だから……。
「それなら、いいのだが……もし何かあったら遠慮なく言うのだぞ?
早く帰れる日には、出来るだけ子育てには協力するからな」