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「もちろん嬉しいさ。
しかし、そうなると名前も男女に分けて考えないとならんな」

 名前……?あ、そうか。
そろそろお腹の子の名前も考えないといけないわね。

「いくつか候補とかあるのですか?」

 課長の事だ。すでに色々考えてそうだけど……。
イメージだと古くさそうな名前にしそうだな。
 さすがに微妙だと止めた方がいいかも知れないわね。

「あることは、あるのだが……さすがに一生使う名前だからな。
 色々画数や響きなどを考えたら難しいもんだな。
特に女の子になると……結婚した後の事も考えてやらないといけないし」

 課長は、ブツブツと呟いていた。さすが、課長。
完璧主義なだけあって真面目だ。
 それを見ていたらフフッ……と思わず笑ってしまう。

「何が可笑しい……?」

「あ、すみません。なんか不思議と言うか。
 課長……あ、ではなかった。誠さんが真剣に子供の名前を考えてるの見てると可笑しく」

 私が知っている課長は、怖い表情をして部下達を叱り飛ばしている姿だ。
 それは……もう今だと想像出来ないぐらいに愛妻家で子煩悩になりそうな雰囲気だ。
 だから余計に不思議で可笑しく思えてしまった。

「真剣に考えるのは、当たり前だ。
 自分の子の名前なんだからな。
それよりもお前は、相変わらず気を抜くと“課長”に逆戻りしそうになるな」

 ふぅーとため息混じりにそう言われる。
だって、未だに慣れなくて……。
 課長歴が長かったせいか、どうしても課長と呼びそうになってしまう。
 結婚したのだから直そうと思うのだが、恥ずかしいやら、慣れないやらでこの状態だ。

「すみません。気をつけてはいるのですが、どうしてもまだ慣れなくて」

「まぁ、初心忘るべからずとも言うからな。
 無理に直すこともないだろう。
俺は、菜々子に課長と呼ばれる事は、嫌いじゃない」

 すると課長は、そう私に言ってきた。
あれ?でも、前に課長がどうとか言ってなかったっけ?
 てっきりそう言われるのが嫌だと思っていた。

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