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ハードゥスの現状報告2

 魔道具とかいうモノが存在する世界から来た者が居た。その者はそれを作ることが出来るらしく、魔道具を作成がてら人々に作り方を教えたりしていた。
 時が経つにつれて、同じように魔道具作製の技術を持つ者が流れ着いてくる。おかげで魔道具がどんどんと普及していった。それにつられるように技術も進歩していく。
 そうして今では、場所によってはゴーレムという石で出来た動く巨大人形の魔道具を造り、それを労働力に家を建てたり道路を造ったりと町を発展させていっている。いつかそれが兵士として戦場に投入される日も訪れるかもしれないし、その前に魔物との戦闘や地下迷宮の探索に活躍するかもしれない。どういう未来が訪れるかは人の選択次第ということか。
 魔道具には他にも色々ある。火を出す魔道具や風を起こす魔道具。中には水を生み出すなんて魔道具なんて物まであるし、物を冷やしたり設置すれば侵入者を告げる魔道具等々、本当に多岐に渡る。主に暮らしを豊かにするのを目的に作られることが多いが、それも今後どうなるか分からない。
 名前だって、魔法道具とか魔導具とか魔具とか補助物とか色々呼ばれている。この辺りは人が様々な世界から来ている関係上どうしても起こるものだ。
 さて、その魔道具は一応全大陸に技術は伝わっているのだが、やはり発展速度には差がついてしまう。特色として大陸によって得手不得手があるのはいいのだが、明らかに技術格差が生まれているのは好ましくはないだろう。
 かといって、出来ることなど魔道具作製の技術を持つ漂着者を優先的にそういった場所に回すぐらい。それでも十分ではあるが、思ったよりも造船技術の向上の速度が早いので、今の内に調整を加えておきたいところであった。もっとも、造船技術の向上が早いと言っても、大陸を渡るにはまだ数十年は必要であろうが。もっと大きな目で見れば、想定の範囲内ではある。
 ちなみに、船に搭載する魔道具もそれなりに在るのだが、そもそも船自体ろくに注目されていなかったので、その辺りはかなり遅れている。船の動力として優秀な魔道具でも開発されれば、一気に進展も夢ではないのだが、今のところそうなりそうもない。魔道具は大分浸透したとはいえ、まだ庶民全てとはいかず、そこで競うだけでそれなりに稼げてしまうので他に目が行きにくいようだ。
 大陸間の交流はまだまだ先の話として、大陸としてはどの大陸も大分発展した。まだまだ内需が追いついていないからか、最近は争いもかなり規模が縮小してしまった。何処も外と争うよりは内を開発した方が良いという結論らしい。
 地下迷宮は育っているのが増えてきたとはいえ、まだ何とかなるレベルが大半なので代謝は良い。最近ダンジョンクリエーターの在庫がごく僅かだが減ったのは喜ばしいニュースだろう、
 他の大陸よりも小さかったので、密かに最初の大陸の規模を拡張したりしているが、今のところどの大陸も全てを開拓出来たという場所はでていないので、当分はそのままでも何の問題も無さそうだ。開拓が進んでいる大陸でも半分ちょっとぐらいのようだし。
 魔物の方は数がかなり増えたが、人との勢力争いはやや分が悪い。とはいえ、それは現状までの話で、これからは勢力の変動は僅かだけだろう。魔物の密度も増したので、人も今までのようにはいかなくなった。
 迷宮大陸で地下迷宮産の魔物は一時期爆発的に増えはしたが、現在は徐々に数を増している程度で比較的安定している。その要因はドラゴンだが、最近ドラゴンは卵を産んでそれが孵ったばかりなので、その安定もそう遠くない内に崩れる可能性もあった。その前に魔物の数が増えて丁度良くなるかもしれないが。
 管理補佐達は変わらず仕事に従事しているが、ネメシスとエイビスは少し仕事が増えたようだ。やはり人というのは数が増えると雑事を増やすらしい。この辺りも統治機構が完成して安定するまでの話だろうから、僅かな期間の話ではあった。
 れいは魔木の実を齧りながらそれらを観察する。北の森も人が入るようになったが、やはり奥地まではまだ無理そうなので、まだ気軽に魔木の実を採取できる。
 褒賞用の実を製造するために魔木を強化させたので、そちらも問題ない。おかげでより気軽に褒賞用の実は配れるようになったので、僅かだがれいの力の運用が改善できた。もっとも、その僅かに意味があるのかどうかは分からないが。

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