第九十九話
見紛う事なきまでに、あの頃の彼女だ。
ドッペルゲンガーでないというのなら同一人物のはず。
何度も彼女を思い描き、会えもしないのに足蹴くあの地へ通ったのだ。
「……オジサン誰? え、しかも外国人?」
髪を振り乱して手を握る男に、彼女は顔をしかめている。
不審そうな眼差しに心が痛むのを堪え、俺は彼女が思い出してくれるのを待った。
「…………ホントに誰? ……私ナンパは受け付けてないんですけど。っていうか、日本語分かります?」
「……覚えてないのか? …………俺のことを」
「え?」
祈るような思いで手に縋る男に彼女は困惑していたが、実は知り合いかもしれないと思ったのか、暫く記憶を手繰ってくれた。
「うーん……………………ごめんなさい」
頭が真っ白になり、喉の奥から乾いた笑いが漏れた。
よく見て見ろ。
確かに彼女に似ているが、和歌はもっと大人っぽかっただろう。
ロングのコートを羽織っていて今まで気づかなかったが、ここにいるのは女子高生だ。
(何をやっているんだ俺は……!)