第四十五話
普通、女と外出する際はいつも以上に気を遣うようにしている。
俺と過ごす時間が心地良いものであって欲しいと思うからだ。
だが今回の行為は思慮に欠けている。
完全にアウトだ。
彼女の開いたままの口がそれを証明している。
「和歌……いや和歌さん、あの……、申し訳ありません。軽率でした」
俺の言葉ではっと我に返ったらしい。
彼女はぶんぶんと頭を振って否定した。
「い、いえ! そそ、そんなこと、ないですっ!」
森林の冷涼なマイナスイオンが浴び放題にもかかわらず、手で顔を仰いでいる。
首元まで真っ赤にした彼女が可愛らしい。
彼女には申し訳ないが、恥じらう姿を見れたことに心でガッツポーズをする自分がいる。
「もう……ウィルソンさん…………」
顔を両手で隠し俯く彼女。
そのまま黙り込み、肩を震わせている。
彼女は否定したが、やはり俺の軽率な行動で傷つけてしまったのかもしれない。
先程までニヤけていたもう一人の俺は、水を打った様にしょんぼりしている。
「和歌さん……本当に、すみません」
刺激しないよう、遠慮がちに背中をさすった。
店主がカウンターからこちらを心配そうに見つめている。
あんな爺さんにまで心配をかけて、俺は何がしたいんだ。