第二十七話
秘密?
秘密とはなんだ?
何かあるのか?
(……いや、人に知られたく無い秘密の1つや2つ、誰しも持っているものだ)
「勿論、取材内容は秘密にさせて頂きます。
これならいかがですか?」
「………………考えさせてください」
ウェイトレスがやってきたことによって一旦話が中断された。
マニュアル通り、注文した飲み物を机に配り、去っていく。
キャラメルマキアートまで俺の傍に置いていった店員の雑な対応にむっとしたが、気を取り直して彼女の方へカップを渡した。
「……分かりました。…………折角ですから、今日は楽しみましょう。
……ここのコーヒーは美味しいと評判なんですよ。一口いかがですか?」
少し暗くなった雰囲気を払拭するため、俺は自分の飲み物を彼女に勧めた。
「いいんですか? 私が最初に飲んでも……」
「ええ、構いませんよ」
にっこりと笑う俺の内側に潜むものは紳士か、それとも野獣か。
「それじゃあ、ウィルソンさんも私のをどうぞ。もし甘いのが苦手でなかったらですけど……」
「お気遣いありがとうございます。……それではお言葉に甘えて」
互いに、各々が注文したものを飲み合う。
正直甘いものは苦手だったが、善意で勧めてくれたものを断ってしまうのも気が引ける。
そんなことを考えながら、甘ったるい香りがするカップの丸い縁に、ゆっくりと口をつけた。