第二十話
「……お久しぶりです。渡辺アミさん」
「あれ、敬語? もぅ、余所余所しいですって。それに前はアミって呼んでくれてたじゃないですか。
あれから一切連絡つかなくて、すっごい心配したんですから!
……上の人間は悪く言うかもしれませんが、局ではルークさんが解雇になった理由に納得がいかないって、同情してる人は何人もいましたし……」
上目遣いでこちらを見つめる彼女は、あの頃と変わっていない。
頼むから今日の俺には関わらないでくれ。
「ご心配をお掛けしてすみません。……ですが、私はもうテレビ屋ではありませんので。それに役員達がそう決定したのなら、もう局には戻れない」
無難な笑顔を向けられ、渡辺アミはきゃっきゃと喜んでいる。
「えー、そんなこと言わないでくださいっ。例えルークさんがテレビ屋じゃなくなったって、私全然気にしませんよ? 私とルークさんの仲なんですから…………」
そう言って俺の腕に女の勲章を押し付けてきた。
昔の俺ならいざ知らず、今はただ不快でしかない。
猫なで声でにゃんにゃんと甘えるのはこいつの得意技だ。