第六話
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電車で揺られること15分。
やっと自宅に戻ると、パソコンの入ったカバンをソファへ乱暴に放り投げ、冷蔵庫からキンキンに冷えた発泡酒をひっつかんだ。
フタを開け、ぐっと一気に喉へ流し込む。
以前住んでいた高級マンションは失業してから売り払い、現在は薄暗い灯りが明滅する安アパートを借りて生活している。
1Kで月額3万円と、かなりの格安だ。
しかし値段の割に部屋はそこそこ綺麗なので、綺麗好きの俺にとってはそれだけが救いだった。
適当に出来合いのつまみを皿に移し、テレビの前に座る。
偽物のビール片手にテレビをつけるが、どれも興味を惹かれるものはない。
部屋の作業机に置いているラジオの電源を入れてみるが、恋だの愛だのくだらない相談ごとばかりで、酒で発散したはずのフラストレーションが再び蓄積されていくのを感じる。
「続いて、ペンネーム『彼氏の靴下が臭い』さんからです」
ペンネームから既に彼氏の悪口か。
「『1ヶ月前から遠距離の彼と連絡が取れなくなりました。彼と会って話しをしたら、「好きな人が出来た。ごめん」と言われ、鼻先で扉を閉じられました。立ち直るにはどうしたらいいでしょうか?』とのこと。
……うーん、長瀬さん、これはちょっと酷いですよね」
「いやぁ、もうちょっと断り方っていうものがあるでしょー。でもこれみんなに言えることだけど、新しい恋を見つけるしか失恋の傷は癒せないから。マジで!」
コメントが酷すぎる。
それが出来るなら、そもそもこのコーナーへ応募したりはしないだろうが。
ストレスが最高潮に達し、俺はラジオの電源をぶち切った。