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褒賞

 大航海時代。というのは誇張が過ぎるのだが、れいが船の設計図をばらまいてしばらく時が経ち、今では遠洋漁業をするまでには船の技術も上がった。もっとも、魔物が居なくともまだ命懸けというぐらいの完成度なので、大陸間航行というのはまだまだ時間が掛かりそうだった。
 それでもそれ以前の状況を考えれば、短期間で随分と進歩したと言えるだろう。このペースで行けば、もう百年か二百年で他大陸に渡る技術が何処かの大陸で確立することだろう。いや、新しい技術に沸いている現状を鑑みるに、もう少し完成までの期間は短くなるかもしれない。
 そんな熱狂を横目に、れいは今日もいつも通りに世界を管理する。
 まだ大陸の一つだけにだが、戦争という要素を組み込んでそこそこの時が過ぎた。既に亡んだ国も出てきているが、思ったほど大火にはなっていない。それでも技術はしっかりと進歩しているので、これはその大陸を管理している者がしっかりとしているということなのだろう。
「………………あの大陸の担当もネメシスとエイビスでしたか」
 ネメシスとエイビスには漂着物を集めた一角全土のほとんどの管理を任せているが、一部別の管理補佐に託している大陸や地域もある。それでも、それ以外は全て二人が担当となっていた。
 その二人が協力し合い管理した結果であるその成果に、れいは満足げに頷く。別に統一国家が出来ようとも、泥沼の戦乱になっても問題なかったのだが、それでも結果が理想に比較的近いものだったのであれば、評価しないわけにはいかない。それもあまり介入しないで誘導したという事実には、更に加点しないわけにはいかないだろう。
 さて褒美は何にするか。れいはそれについて考える。ネメシスとエイビスには、魔木を経由させて弱体化させた果実を既に何度か渡しているが、それまでの功績と今回の功績を比較すると、流石に弱体化果実では褒美のランクが合わない。個数を増やせばいいのかもしれないが、それでは大量になってしまうし、功績の価値が下がりかねない。
 ではどうするか。それを考えたれいだったが、その答えは簡単であった。
「………………褒賞用の果実や武具などの他に、効力を弱らせていない果実を一つずつでいいでしょう。能力が成長してくれれば、今以上の成果が出るかもしれませんし」
 果実の在庫は毎日少しずつ増えているので、れいの手元に在る果実はかなりの量になっている。それでも、気軽に消費出来ないのでしょうがない。しかし、こういう時は気前よく渡せるので丁度良かった。もう少し功績が大きければ、複数個渡すという手もあったのだが。
 褒美の内容が決まったところで、れいは二人の許に移動して褒美の果実を渡していく。ネメシスとエイビスは別々の場所に居たが、どちらも恐縮しながら受け取っていた。
「………………アーロトントの方はどうなっているのでしょうか?」
 完全に大陸一つを任せているので、最低限の監視しかしていないその大陸にれいは意識を向ける。
 アーロトントには、管理する大陸内に限り、漂着物の在庫を取り出して配置する権限を与えている。
 その対象となる在庫は、ハードゥスに流れ着いた漂着物から余ったものを保管している倉庫に創った、アーロトントが管理する大陸用にと分けた一部である。なので、大本の保管庫にはアーロトントはアクセス出来ない。大本の保管庫の方は、れい以外であれば、れいの代行とも言えるネメシスとエイビスしかアクセスできない仕様となっている。
 それはそれとして、つまりはアーロトントは結構自由に大陸を管理出来るようになっているのだ。前回確認した時は、種族などを結構バランスよく管理していたが、現在はどうなっているのか。
「………………相変わらず管理が上手いですね。そういう風に才能を割り振ったつもりはありませんが、元々能力は高い方でしたからね」
 今でもバランスよく大陸を管理している様子のアーロトントに、れいは感心したように頷く。アーロトントはれいが創造した中ではシエルーチュの次に強力な個体なので、それだけ全体的に能力も高かったということらしい。
 それでも最初の印象のせいか、何だか意外な気分になりながらも、上手くいっているのならいいかと思うことにする。
「………………アーロトントへの褒美も力の果実でいいでしょう」
 そういうわけで、れいはアーロトントの元を訪れ、薄めていない本来の果実を一つ渡した。功績の大きさからもう一つ渡してもよかったのだが、直ぐに調子に乗る前科があるので、代わりに弱体化させた褒賞用の果実を多めに渡しておく。それと武具や装飾品なんかも。
 その後は、他の町や地域を管理している管理補佐や、森などの自然をしっかりと管理している管理補佐に、褒美として褒賞用の果実や武具なんかを渡しておいた。
 全員が喜んでいたので、れいは今後もしっかりと働きには報いねばなと思ったのだった。だがその前に、大幅に在庫が減ったので、新しい褒賞用の果実を仕入れなければならなかった。

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