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幻覚

 累は再生して目が醒めると水中に居た。 直ぐに呼吸をしようと焦るが、水中で途中に息が出来ることに気づき、少し思考停止し、水中から出て水を飲めるか試すが、掬えはするが、飲むことは出来なかった。

「もしかして、ココが次の、前のは幻、な訳無いよな」

顔に触れ、火傷の跡を触りながら、出口を探すが、見る限り水面が広がるばかりで、出口は見つからなかった。

遭難の心得とか知らねぇし先ずココの生物擬き食えねぇよな。 って言うか、何で生き残ってんだ俺? 闘えないから殺されるしか無くて、再生が火傷も治せるなら火傷はついてないし、誰かが俺に生きててほしいって思ったのか? そんな価値ねぇのに

「助けてくれた奴に会ったら、何で助けたか聞くか」

前のダンジョンを誰が消したかと言うのは一瞬頭をよぎったが、考えようとはしなかった。そして累は氷で足場を作って白い手帳を見ながらどうやって出口を探すが考えた。

「正義って、剣教えてくれた奴、だよな、複数の視点って言うの ちょっと借りる "正義"」

複数の視点は水中にいる魚の視点を共有したが、「違うそうじゃない」と思いながら別の方法を考えた。

「氷を見てたから多分 近いヤツからってことか、今まで敵が人型とかだったから正直、難しいな」

 しかし、増えた理由ってもしや、クソ主催者? って事はクソ主催者が俺を助けた? 後で考えるか、空欄とかの基準が本当に分からない

「"月" 空から探してみるか」

斥力で空を歩きながら、偶に氷で自分を弾き飛ばすも、数時間何も見つかる事は無かった。

見渡す限りの水、水、水、手掛かりが一切掴めない、限界まで飛んでみるか

累は斥力の限界まで飛び、更に氷を弾き飛ばして水面を見ると、何か黒いものを見つけ、そこまで自分を氷で弾きながら一気に進んだ。 そしてソコには、古く、今にも壊れそうな木製の船が静かに漂っていた。

ココに居るな、多分ココのボス

累は警戒して甲板に上がるが 船の上には何も無く、歩くたびに床がギシギシ音を立てるだけだった。 何か有用な物は無いか船の中を探すも、何も見つける事は出来なかった。

うーん… 外れって事か? 他にもありそうだが 何も無いっていうのは却って不気味だな。 地図とかもねぇし、正直どうするか……

ツンツンと突かれ振り向くと前のダンジョンで消えた筈の少女が後ろにいた。 累は真っ青になりながら「何かな?」と聞いた。

「返して」
「死んだら、もう返っては、来ないよ」
「じゃあ 死んで」
「ちょっと待ってね、直ぐ終わるから」

氷の剣を作り、自分を刺そうとするが、その直後、累の記憶の一部がまるで無かった様に消えた。 そしてさっきまで居た少女も消えた。

「? 何やってたんだっけ? ってか何で剣なんて? よく分からないが、何か手がかりを探さないと」

ーー
正義 真実 複数の視点 剣

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