異分子
「うん、やっと起きたよ、やっと潰せた」
目の前の敵に片方の手で能力を使い攻撃しつつ、もう片方の空いた手は目に入る物を全て邪魔だとばかりに能力で潰し、敵は無駄だと分かっていても炎で攻撃し注意をこちらに向かせようとしたが、抵抗虚しく敵も潰されてしまった。
「よーし、終わった終わった」
「ねぇ、君、主催者って人?」
「合ってるよ」
「何のために殺し合いなんて」
「一つの器に集中させる為」
「器?」
「もういい? ほら、そろそろ無くなるでしょ」
ファムを見ながら指を上に指すが、違和感を覚え空を見ると、暗い空が広がったままだった。
「? 何で消えないんだ? アイツじゃ無いって事? 他にもいるって事? だったら、見える物全部潰せば解決だね」
見える物全てを壊そうと手をかざすと、周りの物が光の粒になって消えていった。
「消えていく、って事はニーナ達が」
「ちゃんと見るのは初めてだけどこうなってたんだ、って事はアッチが仕留めてくれたんだ、時間ちょっと有るし、ちょっと位なら教えてもーー」
「今更、何の様だ」
一人の男がゆっくりと歩きながら声をかけてきた。累の中の誰かは会いたくなかったと言う顔で、累の身体から七歩ほどの距離をとって止まった。
「最奥でゆっくり寝ててよ、何の為に放っておいたと」
「用事ができたんでな」
ファムと累の身体を見つめ、そして消えかかっている子に視線を向けた。 そしてその子を男は吸収した。 そして男は一人納得して話を進めた。
「やはり悪戯とかじゃなく仲良し三人組は倒れたか、そして入り口の騎士達も、やってくれたな」
「コッチにも事情が有ってね、ソレ言うんだったら僕の子供達殺してる様なモノだしお互い様だよ」
「大切にしてる様には思えないけどな、本当にそうなら、その依代から出てこい、簡単だろう」
「出ても良いけど、正直言って、お前らだけには殺されたくは無いからヤダ」
「死にたくないだけだろ」
「もしかしたらそうなのかもね」
「その依代を壊せば出てくるか?」
「さぁね? "審判"」
誰かが喋り終えると累の身体は瞬時に挽肉になり、男はすれ違い様に、「帰ってきたら覚えていろ」と発言し、何処かへ消えていった。
所変わって、一人机に顔を沈めながら独り言を大きくつぶやいていた。
「時間がない、どうにか奴が帰ってくる前に終わらせないと、手を組んで確実に倒すのも有りだけど問題はその後…… 素材が後三つ、いや実質一つを起こして殺されてくれたら半分は終わる、もう一つの方も早いけどやるしかないか、あーもう嫌だ」