第57話 屋台でクレープ! 食べてみたい!
バザールには白いテントがどこまでも並び、たくさんの屋台で賑わっていた。
日用雑貨や衣類を取り扱う店から、香辛料やスパイス、土産品、動物まで、ありとあらゆるものが売られている。
カラフルなモザイク仕様の皿やコーヒーカップに、細やかな刺繍の枕カバーやクッションカバー。
ハーブやスパイスの香りがする香辛料の屋台に、見たことのない果物や野菜が量り売りされている屋台もある。
アクセサリーを売っている屋台には、若い女性が大挙として押し寄せているし、見たことないほど大きな亀を売っている店には、男性がたむろしていた。
できたての総菜や菓子を売る店は、大人から子どもまで行列ができていて、とても繁盛している。
屋台の種類が多岐に渡りすぎて、雑多としか言いようがない。
ひとびとの活気と熱気が、ローゼリアにも伝わってくる。
あながちジャファルの説明は間違っていないようで、薄着のひとが多い。
女性はみな肩や腕の出る服を着用しているし、男性は上半身が裸のひとが多かった。
だがやはりローゼマリアの着衣が、一番露出しているような気がする。
「綺麗なお嬢さん。カットフルーツはどうだい? イチゴにリンゴ、パイナップル。すぐに食べられるよ」
「あなたの白くて滑らかな肌にあうトルコ石のネックレスはどう? ぜんぶハンドメイドなの。お揃いのブレスレットもあるわ」
ローゼマリアとジャファルが歩くと、あちこちから呼び込みの声が飛んできた。
どの屋台も初めて目にするような珍しいものばかりで、ローゼマリアは興奮してしまう。
(すごいわ。ミストリア王国に、こんなバザールはないもの。ステキ……!)
特に気になったのは、スイーツの屋台だ。
バナナに衣をつけ、カラッと油で揚げたお菓子に、小さな木の実のシロップ漬け。
カラフルな色のゼリーに、フルーツをミキサーしたジュース。
「ここまで甘い香りが漂ってくるわ」
どれも美味しそうで、つい見入ってしまう。
「どれが食べたいんだ?」
「え? ええと……」
バニラの香りが鼻腔を掠め、ひときわ盛り上がっている屋台へと視線を移す。
ふらふらといい香りに釣られ、たくさんの頭の隙間から覗き見る。
大きな鉄板の上に小麦粉を引き、半分ほど焼けたところで切ったバナナやリンゴを載せ、クリームを絞り出す。
それをクルクルに巻いて油紙に包んだものを、先頭の女の子が受け取っていた。
「はい。250レイね」
女の子は小銭をチャラと男に渡すと、嬉しそうな顔でひとくちかじった。
「美味しい~」
ほっぺたが落ちそうな表情で、お菓子を頬張る女の子が可愛らしくて、ローゼマリアもそのお菓子を食べたくなってしまう。
(クレープにそっくりだわ。食べたい!)