現在のハードゥス
現在ハードゥスには六つの大陸と一つの島が存在している。
その六つの大陸とは、始まりの大陸、始まりの大陸を基に調整された大陸、迷宮大陸、人の楽園の大陸、魔物の楽園の大陸、アーロトントが管理している大陸だ。
一つの島とは、魔物や植物などの人以外の存在の保護区である。人以外の多くは最初にこの島に配置され、この島で育ったモノが各大陸に配置されていく。保護区の中には小さな海もあるので、海の生き物もここで一度保護されてから放流されている。
というのも、既にハードゥスに根付いた存在というのは独特の強さがあるので、漂着して直ぐにその生態系の中に放り込むと、大抵そう経たずに淘汰されてしまうのだ。
例外は、ドラゴンのように最初からある程度強い存在か、人の楽園のように弱い方が歓迎される大陸に放つ時ぐらい。
ハードゥスに存在する全ての大陸と島の間には海が横たわり、漂着物を集めた一角とペット区画の境界も海である。そして、ハードゥス全体で見ると、漂着物を集めた一角は湖の浮島のような小さな存在である。それぐらいにハードゥスは広い。
それぐらい広いというのに、未だにハードゥスは拡張し続けているというのだから、れいの強大さが解るというもの。
実はハードゥスの管理をしている分身体のれいに関して言えば、他の分身体よりも成長が早い。それというのも、れい自身は外の世界から流れてくる力の影響を弾いているのだが、ハードゥスそのものまでは性質上、力を弾くわけにはいかない。
そして現在のハードゥスは、言ってしまえばれいそのものでもあるので、ハードゥスが受けた影響は少なからずれいも受けてしまうのだ。その状況で自身に振りかかる力を弾くのを止めてしまえば、恐ろしいまでに急速に成長してしまうことになる。
考えただけで恐ろしい話だが、れいは常にその力を減らす方法を探している。最近少し上手くいったが、全体で見れば無駄な足掻きに近い。
そもそもの話、れいの力が増える一端に、れい本体が外の世界に力を放出しているということも関係しているのだが、それは論じたところで意味がない。本体の方は、外の世界からの力を弾かないで受け入れた場合のれい以上に成長しているらしいのだから。
また新しい大陸を創ろうか? そんなことをぼんやりと思案しながら、れいはラオーネ達を撫でる。
「………………」
しばらくそうやって愛でたところで、折角広い世界だというのにペット区画に二匹だけというのも寂しいような気になってくる。そろそろ追加があってもいいだろう。かといって、そう都合よくペットが現れるわけではない。
少し考え、力を消費するためにも何かペットを創造しようかなとれいは思った。漂着物を集めた一角だと、何かなければ創造するつもりはないが、あまり気乗りしないとはいえ、ペット区画だと今更なような気がしてくる。どうせ何処かで力を消費しなければならないのだから。
では何を創造するかだが。
「………………そういえば、少し前にドラゴンが流れ着いたのでしたね」
空を見上げたれいは、ふとそんなことを思い浮かべる。ペットには海中と地上を生活圏としているのはいるが、上空に関してはまだであった。であれば、そこを生きるペットを創造してもいいだろう。
力も大量に消費したいので、折角なのでアーロトントを越える存在を創造することにした。現在のれいの全力で創造しても、消費という点では微々たるものなのだが。
「………………ドラゴンは強いと聞きますし、あれをモデルに考えてもいいのですが……」
うーんとれいは首を捻る。れいにとってはドラゴンもそこらの草も同じ強さなのだが、それはそれである。ただ、ドラゴンを創造するのは少々面白みに欠ける気がした。それに、ドラゴンは空の覇者とも言われるが、山の上とはいえ、結局は巣は地上に造っている。れいとしては、それでは空の覇者とは言えない気がした。
というわけで、別の何かを考える。とりあえず常時上空に浮いていられる存在にはするとして。
「………………もう少し考えてみるとしましょう」
そこで、このまま考えていても時間が掛かると判断したれいは、ラオーネ達と別れて、色々とやっている間に考えようと判断した。というわけで、まずはラオーネ達同様に愛でようと、れいはモンシューアのところへと行くところから始めるのだった。