11.目が覚めたら高級ホテルのベッドの中……?
モゾモゾと動いてみるが、どうにもこうにも頭が痛い。
ゆっくり起き上がるとオレンジの光に取り巻かれ、一瞬で眠気が吹き飛ぶ。
「な、何時!? 会社行かなきゃ……!」
さらりとシーツが落ちて、自分が一糸まとわぬ裸であると気がつく。
「きゃっ……ど、どうして?」
驚くのは裸であることより、自分が寝ているベッドと部屋の様相だ。
清潔そうな白と、格調高い木目を基調とした室内。
三人は寝られそうなキングサイズベッドに、フカフカのクッション。
左側は全面ガラス窓で、カーテンの隙間から西日が差し込んでいる。
ベッドのサイドと上部にはおしゃれなライト。
目の前にはオットマンつきのおしゃれな椅子まで置かれて、エグゼブティブ感満載。
ちひろは何が何だかわからないまま、そっとベッドを抜け出した。
窓から見える景色に驚愕する。
オレンジから群青色へと暮れゆく空。そして……
「スカイツリーが見える……え? ここ、どこ?」
おそるおそるベッドに視線を移すと、そこには――
見事な筋肉美の、整った寝顔の男性が裸で寝ているのである。
(な、何? このイケメン過ぎるおじさんは!)
何がどうなっているのかさっぱりわからず、頭の中がグルグルと渦巻いた。
「え……わたし、どうしたんだっけ?」
確か……
土曜日だが出勤し、会社が空っぽになっていたことに、衝撃を受け……
更には社長が夜逃げしてことに対し、裏切られたと激しく落ち込み……
フラフラと入ったホテルのバーに入って……
「……隣に座った、格好いいおじさまに……」
慰められて、酔っ払って足腰立たなくなって、どこかで休憩したほうがいいと言われ……
――あなたと、もっと一緒にいたいです……
(思い出した! 私、自分から、そんなことを……!)
さらには、恥ずかしくて死ねそうなことまで口にしたような気がする。
『お願いです。最悪な今日という日を、おじさまで忘れさせてくれませんか? 私の処女を……もらってほしいです。……駄目ですか?』
『何を言いだすんだ。困ったな。……このソファでおとなしく待っていなさい』
急遽、手配してくれたホテルの部屋に入ってからも、ちひろは「おじさま。お願いです……抱きしめてください」と迷惑な押し売りを続けたことも、うっすらと記憶にあった。
そして今、ちひろはホテルの一室、真っ裸で狼狽えている――