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楽しい一日

 累の話が終わった後、部屋に戻ると、何かの紙を見ながらこれが何なのかが話し合われていた。累は葵や雄介など人数が増えた事も有り「部屋間違えた、悪かった」と一旦出るも「間違ってない」と言われ、部屋に引き摺り込まれた。

「お前ら…… 何の話してたんだ? 前の紙か? 正直文字読めないなら」
「違う、コレ何?」

三角の何かがついた丸い胴体、その中には黒い点々の数々、そして三角の近くには丸が描かれてあった。累は雀と言うが、「嘴が長いキツツキじゃあ」、「お腹の膨れたツバメかと思ってた」、「ウグイスの間違いだろ」、と色々な種類が言われたり足が無いなどのツッコミが来た。そして即興で描いたファムは累の知らない雀を描き「雀ってコレだよね」と聞いてきた。そしてソレは累よりも物凄く近かった。恐らくこの世界特有の雀だろう

「悪かったな下手で」
「言葉の勉強したいって言ったから色々持ってきたけどやる?」
「やる」
「ついでだし絵の描き方教えようか?」
「ありがたいけどまた今度で、後みんななるべく静かに頼む」

言葉の勉強は累に知ってるか聞いた後、誰が一番最初に説明して分からせるかを競う事になり、一番分からせたのは雄介だった。その後絵描きの対決に移行し、ファムの格の違いを見せつけられる形となったり、寝ているムーを描いている途中に「視線を感じるから」と言って起きて、ムーが参加したりと色々有り、途中、累が静かに頬を緩めていた事は誰も知らず、この日は終わった。

 今日は良い一日だったな。友達って、あんな事出来る奴の事を言うのか。俺なんかが味わっていいんだろうか

 「じゃあ又明日」
「本当に物好きだな」
「他に言葉有っただろ……」
「そうだな、じゃあ又明日」
「おう、じゃあ今日から累は友達な」
「勝ってから言え」

 名残惜しいけど、何かあの時と違う暖かい感じがする。 今は分からないけど、いずれ分かるよな。

 累は部屋で一人になった後、布団を片付けて、今日使った紙を机の引き出しに入れ、今日のことを思い出しながら、壁に腰掛けて静かに眠った。

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