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家族の絆

遺族待合室に入ると人形を抱きながら静かに会話している母娘の姿が目に入った。

「どうでしたか?いろいろお話はできました?」

そう声をかけると「はい。最後にあの人の声を聞くことができました。娘の通訳付きでしたけど」と奥さんに少し笑顔が戻ったような気がした。

「ごめんなさい、ちょっとお化粧直してきます」そう言い残すと化粧室に去っていった。

「吉澤さん、来てよかったでしょ。」
「まあな」

「吉澤警部補、今日は警視総監もお見えになる予定です。」

「俺も出世したもんだな」
「そうですよ、吉澤警視。」

「そろそろ始まるな、ショータイムだ」

  ☆

葬儀も終わってみんなぞろぞろと帰り始めた。弔問客は350人ほど数えた。生前の吉澤の人付き合いがほとんど警察関係者だったため家族葬は執り行わない事になった。吉澤の家族も今夜はホテルに泊まり明日の出棺に備えることとなった。

帰りにみんなで食事でも、という話になり駅前の居酒屋に杉田と細川、そして私と吉澤で個室をとった。

「高梨さんも今日一日ご苦労様でした。疲れたでしょう」と杉田。
「警察葬なんて初めて見たんじゃないですか?」とビールを勧めながら細川が聞く。

「ええ、凄いですね・・・」

「家族みたいなもんだからな」と吉澤が答えた。

私はテーブルの上に座らせた明日菜の前にビールの入ったグラスを置く。サイズ的にお猪口の方がいいかもしれない。

「それで早速なんですが・・」と杉田が話を切り出した。徐がガンとして口を割らない事、SDカードのパスワード解除がまだできない事を吉澤に報告した。まあ吉澤の殺害の証拠はあるので自供無くてもまあ問題ないだろう、駐車場の件は防犯カメラのチェックと盗難されたインプレッサの周りに停まっていた車のドライブレコーダーから出ないか当たっているらしかった。

 「で、依頼された峯岸の内偵なんですが・・数社に渡り600万ほど借金がありました。が今日の午前中に全額振り込まれて完済されてますね」

「へぇ・・羽振りがいいな。ボーナス時期でもないのになぁ」

「明日、俺の出棺が終わったら峯岸よんで問い詰めてみてくれ。駐車場のあの事件、俺は車乗っていたのは峯岸だったんじゃないかって思ってるんだ」

「植村が襲われたのは非常階段で不審者の職質してる時だったって言ってて防火扉の影に倒されていたって話だったよな?峯岸が閉じ込められていたというラジオ会館のトイレでは無理があると思うんだ。」

さすが吉澤さん、俺が今日疑問に思った所そこなんだよ。あれだけ出入りが激しいところに引き摺り込むのは無理なんだ。

本当は今からでも尋問したいだろうけど、峯岸がその大金をどこから手に入れたかも重要だ。おそらく林家一家惨殺事件にも繋がっている。

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