秋葉原再び
夜、なかなか寝付けなかったが何時間かは寝れたようだ。
もちろん別々のベッド、ひょっとしたら吉澤さんは枕だけでも良さそうなサイズではあったが、吉澤さんも寝れたんだろうか。そもそも霊って寝るのか?
刺客が逮捕された事、物証が破壊出来たことで恐らく狙われないだろうけど、念の為クルマでアパートまで送ってくれる事になった。
下着を着替え、洗濯機に放り込んだ血まみれの服は脱水が済んだままになっている事に気がつく。
あー、駄目だなこれ・・・。
ゴミ袋に入れると礼服と靴をバッグに入れて待たせていた車に戻る。
会社へはホテルを出る前に連絡しておいた。
玉川から首都高に乗るとき、ふと気付いてもう一度秋葉原に寄ってもらう。
再びラジオ会館だ。
昨日の商魂たくましいお姉さんが居たので話が速い。
「こんにちはぁ、今日はどうしたんですか?」
「昨日のサイズで黒っぽい服あるかな?出来たら冠婚葬祭に使えそうなヤツ」
また難しい話を持ってきたなぁ?という雰囲気が一瞬浮かんで消えた。
「あ、あの服なら・・」と言いかけてバックヤードに行く店員。
持ってきたのは黒く、ところどころ透けた浮かしレースのついたゴスロリファッションだった。
ブラックなんちゃらシリーズでヘアアクセサリーのボンネットは着れないからヘッドドレスは無しで・・と聞き慣れない単語が耳から入ると反対側の耳から出てゆく。
「アスナちゃん、お久しぶり〜!じゃあちょっとお着替えしてみようかぁ〜?」と吉澤に顔近づけて話しかける。
「やめろ、よせって!俺はそんな服似合わねー!!」
反論は店員の耳に入る筈もなくあっという間に着せ替えられてしまった。
「どうかしら?ほらっ、かわいい💕」
膝上までのふわっとしたスカートにガーターストッキング、黒いエナメルパンプスという姿と店員が何か閃いたらしくラッピング用リボンと両面テープで髪飾りを器用に作ってつけてくれた。サービスだという。
この女性、センスは悪くない。
元々赤いパニアで赤黒のドレスを黒とチャコールにし、重過ぎずシックにうまくまとめてくれた。
吉澤はぶつぶつ言っていたが店員に礼を言いお会計・・
ゲ!そんなにするの??
来月の引き落としが今から心配でならなかった。
これは私からの香典がわりだ。
あと、このアスナの元々の人形の入手先を聞くと階下のお店を教わった。
なるほど、白い甲冑の女剣士だったのね。
先程の服に較べるとたいした金額では無かったからそちらも購入する。
「どうした、急に人形趣味に走ったか?」
「いや違う、ちょっと、ね。」
ちょっとね、で思い出した。
ちょっとトイレに寄らせて貰った。
個室に入り、小用をたす。
なるほど、ね。
ここに寄ったのは大きな収穫だった。