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今夜はヤマダ

救急隊員によって植村が応急処置を受けている間に鑑識班がやってきた。規制線がたちまち張られ、どこで聞きつけたのか報道もやってくる。
鑑識班が現場の写真を撮ったり指紋の採取をしていたが、現場一面に撒かれた消火剤のお陰で指紋採取は困難らしい。

また、その頃居なくなった峯岸がラジオ会館のトイレで発見された連絡が入った。植村同様何者かに鈍器で殴られて個室に押し込まれていた。
失神から覚めた後呻き声を聞いた利用者が、発見してくれた様で命に別条無かったのが不幸中の幸いだった。

『不意をついたといえ現職警官2名を倒してクルマを盗んでターゲットを始末しようとする・・・ただの悪党とは思えないな。』吉澤が呟く。

殴り倒されたの警官だけでは無かった。
そう、あのインプレッサのオーナーも手足をガムテープでぐるぐる巻きにされてリアシートに転がされていたのだ。

今の車はイモビライザーという防犯装置が標準で備わっている車がほとんどだ。昔みたいにハンドルの所を壊して直結するのは無理。
なら、持ち主襲った方がスマートに車を奪えるのかもしれない。

インプレッサのオーナーが救急車で搬送するのを見届け、パトカーで本庁に植村と共に送ってもらう事にした。
日中、人気のある場所で一度襲われた以上、いつどこで再び襲って来るかわからない。相手が単独なのか複数かもわからないのだ。

2人を乗せたパトカーが地下から地上に上がろうとしたちょうどその時、警察無線から今回の事件の被疑者と思われる男を警ら中の警官が確保したとの連絡が入った。

白い粉まみれで額を切った男が歩道を歩いていたところを自転車で警ら中の警官が不審に思い、路上で職務質問をしているらしい。任意の職務質問と所持品携帯を拒否され応援の依頼の無線だった。

「我々の顔を見せると態度が硬化する可能性があります。ここは所轄の人間に任せましょう」

そういうと、植村は少し離れた位置にパトカーを停めさせた。

応援にカブの警官数人もやって来て取り囲んでいる。暫くすると覆面パトカーが到着して2人の刑事が書類を男に見せた。

男は観念したか渋々と所持品検査に応じた。革の巾着袋と財布、タバコ、携帯は無い。
キーホルダーに小さなアーミーナイフが付いているのを覆面パトカーで駆け付けた刑事が見つけ出した。
銃刀法違反の疑いで最寄りの警察署までご同行頂くことになった。

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