アブなかった刑事
「高梨さん、お怪我は?大丈夫でしたか?」
左手で頭を押さえながら駆け寄った男は拳銃を脇の下のショルダーホルスターに仕舞いながら駆けつけた。
『植村、その怪我どうした?』胸ポケットに収まった吉澤が同僚に声をかける。
「高梨さん、連中の狙いはおそらくその人形です。危険です、カバンにしまっておいてください。」
やっばり吉澤の声は目の前の男には届かないようだ。
「ああ…はい。あなたは・・植村さん?」
「ああ、自己紹介遅れました。私、警視庁捜査一課の植村と申します。あなたの警護を申し付けられてます。」
そういうとバッチを見せた。
「植村さん、その頭のキズは?大丈夫ですか?」
「ああ、連中に襲われました。同僚峯岸の連絡が会話の途中で途切れたと思ったら背後からガツンとひっぱだかれてしまって…痛っ!」
ふと同僚、峯岸の存在を思い出して電話をかけたところ、意外な場所から呼び出し音が流れた。
目の前で真っ白になったインプレッサ・・だった車の中からだ。
植村は車内を覗き込む。
助手席のフロアマットの上に真っ白になった携帯が震えていた。
「何故、峯岸の携帯がここに?」
『おそらく、峯岸が襲われて携帯を奪われ俺たちをこの駐車場に誘導したんだろう。峯岸の安否が気になるな』
私達の携帯に峯岸さんからメールが届いてこの駐車場に来た事、そして吉澤の推理を植村に伝える頃、集まり始めた野次馬の間からパトカーと救急車が駐車場に滑り込んできた。