見えない壁
桜田門駅から有楽町駅で山手線に乗り換えて新橋に向かう。
途中、背後から尾行されている気配を感じトートバッグに入れた吉澤に話しかけた。
『ほう、気が付いたとは凄いな。2人護衛について貰っている。』
『一応、あんたは俺を殺した奴に会っている重要参考人だし、俺も貴重な物証だ。そんな目撃者と物証が揃って歩き回っていたらカモネギだろう?それに・・』
「それになに?」
『あんたが俺を捨てて逃げ出さないとも限らんからな』
「見張りかよ」
駅の改札を出てトイパークに向かう。
キャラクターグッズや土産物の間を抜けてリカちゃん人形を売っているコーナーにたどり着いた。
「色々な服出てるんだな。オッさん、どんなの着たいんだ?」
『オッさん言うな!』
「このピンクのフリフリドレスなんかどうかな?」
『見せてくれ、頼むから買う前に見せてくれ!』
「あ・・・」
『・・・どうした?』
「見えない壁が出来た。」
『え?』
そこそこの人混みだった店内だった高梨の周りだけ広く空間が生まれてきている。
ヒソヒソと声を抑えた話し声、そして写メを撮ったのか携帯を胸元で構え、目があうと徐ろに視線が宙を泳ぐ人数名・・。
「いかん、頭が逝かれたやつと思われてる」
そう言うと足早にお店のスタッフをみつけて小走りに駆け寄る高梨。
「あの、すみません〜・・・」
「ヒッ!」
「あ、あの、怪しい者ではありません。ちょっとだけ怪しいかもしれない者かもしれないけど。」
後ずさろうとした店員を呼び止めてカバンの中から人形を取り出して詰め寄る。
「この人形が着れる服を探しているのですが」
「この子ですか・・・うちで扱っているのだとちょっと小さいですね。」
「小さいんですか?」
「うちで扱っているのはリカちゃん位ですからね〜秋葉原行けば揃うと思いますよ。地図描きますね。」
「あ、あ、ありがとうございます。」
親切な店員さんだ、と思ったけど程よく追い払われた感もあった。だってサイズ的には似たようなモンだと思うんだけどなぁ。
礼を述べそそくさと駅に戻り秋葉原に向かう。
なんかまた一つ行きにくい店が生まれたかもしれない。