捜査一課特別捜査課ゼロ係
駐車場の一角にクルマを停めてエレベーターに乗った。中型エレベーターの扉が閉まり杉田が6階のボタンを押すとゆっくりとエレベーターが動き出しつかの間の静寂が訪れる。
ほんの数秒のことだけど。
そして6階へ。
そして、来てしまった。
俺、今日帰れるよな?
嫌な予感しかしない。
刑事部に足を運んだ時に視線が集中するのが否応でもわかる。ある者は手を止めているし、手を止めずに視線だけで追う者もいた。
いわゆる刑事部屋の奥に目立たぬ別室。入り口には「特別捜査課」の看板。
中に入ると幾つかの机が並び、その中の一つだけ花瓶が置かれていた。
「吉澤警部補、残念でなりません。そして・・・お帰りなさい」
そういうと部屋の中に居た人間が集まってくる。
杉田は鞄から人形を取り出すと花瓶の側に立たせた。
「吉澤さん、ここの人たちはみんな状況を知っているの?」
『この杉田と細川は俺と会話できる。あとは・・俺が殉職した事実と、俺がこの身体に乗り移っているのはどうかな?信じるか信じないか。』
「じゃあこうして会話している状況というのは・・・他の人には・・」
『人形に向かって話している変な人達だろうね。』
そこに細川が割って話に入ってきた。
「私と杉田、そして吉澤警部補にはちょっと特殊な能力があるんです。霊感というか、そんな能力ですね。」
「なんかSF映画みたいだな」
「特に吉澤警部補には物に残った残留思念を読み取る能力がありました。唯一管で警部補だけだったのです。」
なるほど。
『細川、オレのこの服に残った血痕と指紋を採取して鑑識に回してくれ。揉み合いになった俺を殺ったヤツの身元がわかるかもしれん。』
「わかりました。では失礼します。あと、安置室に御遺体到着してます。この後司法解剖の予定がありますがご覧になりますか?」
そう言いながら手袋をはめて人形の衣装を剥がすと密封式のビニール袋に入れた。
『なんか代わりになるもの用意してから脱がせよ』
そう言いながら吉澤はティッシュペーパーをとると器用に身体にバスタオルの様に巻きつけた。
「凄い、人形の身体動かせるのか?」
意識だけ乗り移って対話だけ出来ると思っていたら人形がひとりで動く。普通ならもう単純にホラー映画だ。可愛いぬいぐるみとかならまだそんな映画があった気がするけど。
『まあな。ただ、ちょっと疲れる。悪いがちょっと付き合ってほしい。いいかな?』
「どこへ?」
『さすがにこの格好じゃマズイだろう』
「そうかな?結構セクシーだよ」
『阿呆っ』
『細川、俺の携帯彼に渡しておいてくれ。連絡は彼を通じて頼む』
「了解しました。高梨さん、すみませんが先輩をよろしくお願いします。」
そういうとガラケーを手渡される。
『まずは着る服探しに行こう。おもちゃ屋行けばあるかな。』