ルカさんの事情
『さぁ、入って入ってっ!』
『お、お邪魔します······』
私はルカさんに誘われてルカさんのお店に入らせてもらいました。
調理場を抜けて奥の部屋へと通されました。
多分、此処はお店兼自宅なんでしょう。
『お腹も空いてるでしょ? 今、食事を用意してくるからちょっと待っててね』
そう言ってルカさんは調理場へと戻って行った。
私は部屋の中をキョロキョロと見回していた。
(やっぱり全然違うのね、でもなんだか落ち着くわ、この座っている床から匂いがするのかしら)
この床、タタミは日本独特な物らしい。
さっきの鑑定で日本が独立した島である事、その為に独特の文化が根強く残っている事を知った。
(このタタミも日本だけの文化なのね)
1人で納得しているとルカさんが食事を持って戻って来た。
『うちの残り物だけど食べて』
『あ、ありがとうございます』
ルカさんにお礼を言って私はまず『オコメ』を食べた。
『美味しいっ!』
『でしょ、私も初めて食べた時は涙が出るくらい感動したわ』
『私の国には無いですよ』
『この世界にしか無いからね、他の物も食べて』
私は『ミソシル』、『コロッケ』、『メンチカツ』、『ツケモノ』を食べたけどどれも美味しかった。
私の胃袋はあっと言う間にいっぱいになった。
『ごちそうさまでした、どれも美味しかったです』
『良かった、満足してくれたみたいで。それでアレクシアちゃんはどうして追放されたの?』
私は今までの事を話した。
『はぁ~、あの国は何にも学んで無いのね』
ルカさんはため息をついて愚痴るように言った。
『ルカさんはどうして追放されたんですか?』
『私も貴女と同じ理由よ、10年くらい前の話だけど私も当時は公爵令嬢で当時の王太子の婚約者だったんだけどいきなり現れた男爵令嬢に婚約者を奪われて追放されたのよ』
なんと私とまるっきり同じだった。 10年前と行ったら私が5歳の時でまだ婚約者になる前の話だ。
『リチャード・ロンド、私の元婚約者なんだけど、今は何をやってるのかわからないわ、向こうだって10年も経てば色々変わってるかもしれないし』
ん? リチャード?
『リチャードって確か今の国王の名前ですよ』
『えっ!? アイツ国王になってるのっ!?』
『はい、王妃様は平民上がりで凄く仲良くて国民の理想のカップルとして有名です。国王夫妻を題材にした劇も何度か上演してましたし』
『はぁっ!? 何幸せになってんのっ!! 人の人生メチャクチャにしといてっ!! 私がどれだけ苦労したかっ!?』
······何年経ってもやっぱり裏切られた思いはずっと引きずるんですね。