バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

41話〜忍耐力の差

 ここはルポアール亭の応接室。クロステルはガルドに突き飛ばされ本棚に頭をぶつけ、口と鼻から血を流し意識を失っていた。

 ルミネアとマグド達は、一瞬何が起きたのか分からずにいたが、我に返りクロステルを見た後ガルドを見た。

「ふう〜、危なかったな」

「ガルド、助かった。フゥ、お前のお陰で命拾いしたよ」

「ああ。それは良かった。だが、ここでいったい何があったんだ?俺にはこの状況が見えねぇんだが」

 ルミネア達はここで何が起きたのかをガルドに説明した。

「……という事なのですが」

「なるほどな。マグドが王子で、ここに伸びているクロステルが王子直属の側近で……。城を抜け出したコイツを連れ戻す為ここに来たが、ビスカを見て気に入り自分の欲の為に屋敷に連れて行こうとした。だが、それをマグドが身体を張って阻止しようとし、逆に返り討ちにあい、あわや刺されそうになっている所に、俺が偶然扉を開け、その光景を見て……って訳か」

「ええ。ですが、ガルド様。貴方は、私どもの想像を遥かに超える強さだったようですね」

 そう話をしているとゴルギアスが廊下に放置されていた大虹色スミレを引きずりながら部屋に入って来てガルド達の前まで来た。

 ゴルギアスは大虹色スミレを床に置き、クロステルを見ると、

「これは……まぁ、自業自得と言うべきか。いつかはこんな日が来るんじゃねぇかって思っちゃいたが。こんな所で本性を現すとはな」

 ルミネアは床に置かれた大虹色スミレを食い入るように見ると、

「ゴルギアス。まさかとは思いますが、この大きな花は大虹色スミレなのですか?」

「ああ。ガルド様が、虹色スミレでなく、コイツを倒し、ここまで担いで持って来たらしい」

 ユリィナとビスカはそう聞くと大虹色スミレの側に来て眺めていた。

 マグドは動けず壁に寄りかかりながら大虹色スミレを見ていた。

「さて、どうする?クロステル様が、気を失っている内に色々と話したいが。その前にクロステル様を、何処か別の部屋に移した方が良さそうだな」

 ゴルギアスはクロステルを念の為、縄で縛り抱きかかえ、奥の客室へと向かった。

 それと入れ替わるように、ガルド達を追いかけひたすら歩いていたマリアンヌが、やっと追いつき部屋に入って来た。

「な、なんなのこれは?てか、何故マグド王子がここにいて、こんな大怪我してるわけ?」

「マリアンヌ!?貴女こそ何故ここに?」

「ユリィナ!あーえっとね。これには色々と事情がありまして……それよりもクロステル様は何処にいるのですか?」

 マリアンヌは辺りをキョロキョロと見渡した。

「マリアンヌ。クロステルはな……」

 ガルドはマリアンヌにここで何があったのかを話した。

「はぁ、なるほど。クロステル様がそんな事を……。あの噂は本当だったのですね。欲と女が絡むと人が変わるという噂は、本当は信じたくはなかったのですが」

「おい!お前達、俺はいつまでこんな状態でいればいいんだ?」

「あっ、そうでした。申し訳ありません。これは、早く手当をしなくてはいけませんね」

 ルミネアは部屋の奥に行くと棚から薬箱を取りマグドの前まで来ると、薬箱から痛み止めの飲み薬を取り出しマグドに飲ませた。

「うっ、な、何なんだ!この苦い薬は……ゲホゲホッ……」

「あら、これは失礼しました。王子は苦いお薬は初めてだったのでしょうか?それとも苦手だったのかしら?まさか、そんな事はありませんよね」

「ル、ルミネア。そ、それは……」

 マグドは下を向き何も言えなくなった。

 ルミネアは薬箱の中からピンセットと綿と包帯と傷薬を取り出しマグドの治療を始めた。

「ウ、グッ……ル、ルミネア!もう少し、あー、優しく……グッ、で、出来ないのか!?ハァハァ……」

「あらあら、王子。そんな所を皆に見せていいのですか?」

 マグドは辺りを見渡して見るとガルド達がその様子を見ていた。

「マグド。そんなに痛てぇのか?」

「ガルド……」

 マグドは弱音を吐こうとしたが、ガルドを良く見ると至る所に擦り傷があり、数ヶ所かなり酷い傷を負っている事に気付いた。

「……お前!?その怪我、大丈夫なのか?」

「怪我?ああ、これか。流石に痛かったが、洞窟を抜けてから直ぐに、持っていた薬を飲んで痛みは抑えてあるから、何とか大丈夫だ。あと自分で酷い傷の所だけ治療しておいた。簡単な応急処置だがな」

「ガルドが、そんなに酷い怪我をしていたというのに、私はそれに気付かないなんて……」

 ユリィナは下を向き落ち込んでいた。

「ユ、ユリィナ……。見た目よりそんな酷い怪我じゃねぇし大した事ねぇから心配しないでくれねぇか」

「ガルド、ありがとう。それと、無理はしないでね」

 ユリィナはガルドの顔を見つめながら泣きそうになっていた。

「ああ、分かった」

 ガルドはユリィナを見つめ頷いた。

「あー、えっと、2人ともさぁ、気持ちは分かるけど。いきなり2人だけの世界に入らないでくれないかなぁ」

「ビ、ビスカ!2人の世界って……」

「おい、ビスカ!何でそういう話になる」

「ん?そう見えたけど、違かったのかぁ」

 ビスカに言われガルドとユリィナは顔が赤くなりお互い目を逸らした。

 その後ガルド達はゴルギアスが戻って来るのを待ちながら話をしていた。

しおり